OSK 翼和希「朝ドラ〈ブギウギ〉のオーディション。爪痕を残したいとバッチバチのスーツにリーゼントで臨んだ」
◆オーディションで、翼和希オンステージ! 劇団の大先輩・笠置シヅ子さんをモデルにした朝ドラが始まると聞いた時は、大興奮しました。しかも創立101年という新たなスタートの年に放映されるとは、なんて素敵なご縁なんだろう。どうにかして自分も関わらなきゃ、と強く思ったのです。 ところが、劇団が私の応募書類を出してくれたのは、なんとヒロインオーディション。笠置さんは小柄で華奢な方と伺っていましたから、ガタイのいい男役の私が受かるとは思えない。でも、何かチョイ役でもいただけるように爪痕だけは残したい。その気合のもと、バッチバチのスーツに、地下鉄の風にもなびかないほど固めたリーゼントで挑みました。 会場では、オーディションと言われつつも「これは舞台だ」と自分に言い聞かせて。歌の審査では、課題曲である笠置さんの「ヘイヘイブギ」を審査する方と「ヘーイヘイ」「ヘーイヘイ」とコール&レスポンスしながら、思い切り調子に乗って歌い上げました。 まあ、スタッフの皆さんも笑ってくださったし、翼和希オンステージとしてはやれることはやったからと思っていたら、なんと初代男役トップスターにして熱血漢の教育係、という素晴らしいお役をいただくことができました。 舞台の人間は演技が誇張的だから、映像のお仕事は苦労すると聞いていましたが、テレビは細かいお芝居を繊細に映してくれることが魅力だと思います。舞台では5つのことがやりたくても、2つくらいに絞らないと何をしたいか伝わりません。でもテレビは心情の変化を、ちょっとした表情や動きで表現すれば伝わることが面白かったです。
注目していただいた「目力」ですが、疲れてぼーっとするとすぐ目に表れてしまって、集中していないことがバレやすいという難点がありまして(笑)。長丁場の撮影でも集中力が途切れない共演者の皆さんは、本当にすごいですね。 主演の趣里さんは、「私なんぞがヒロインに応募してスミマセンでした!」と謝りたくなるくらい、福来スズ子そのもの。芸事を続けてきた方だから真面目で、まさにドラマのセリフにもあった「努力の天才」です。 でも天真爛漫で、いつもケラケラ笑って明るい。すでにがんばっている方に「がんばって」なんてよう言えないので、お会いするたび「どうか体に気を付けて」とお声がけしています。 ドラマには――もう1回くらい、登場できたらいいですねえ。白髪になって杖つきながら、スズ子の歌を聴きに来るとか、なんなら髭の紳士になってるとか(笑)。それはもう、皆様から局へのリクエストが頼りでございます。 OSKとしては、ドラマをきっかけに興味を持ってくださったお客様に劇場へ足を運んでいただき、「楽しかったからもう一度」と思ってくださる方を一人でも増やしていくことが今の目標です。 そのためにも、皆様の心をわし掴みにして離さない気持ちで、1回1回の舞台を、命を燃やし、真心をこめてお届けしていきます。 今年はOSK創立102年です。私は「継続」という言葉を大事にしたいと思っています。継続には、ただ現状を維持するだけでなく、新しいチャレンジも必要でしょう。今よりさらに昇り龍のごとく、前を向いて挑戦していきたい。 私の目下の夢は、宙乗りのタップダンス。いつか劇場の天井近くから私の華麗なステップをお届けすることを目標に、これからも精進していきます! (構成=山田真理、撮影=岸隆子)
翼和希