年金の繰下げなんてしなきゃよかった…月13万円が18万円に増えた70代男性、安泰の老後を送れるはずが「取り返しがつかないことをした」と涙したワケ
繰下げてもお得にならないことも?
厚生労働省『令和5年簡易生命表の概況』によると、日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性81.09歳。ともに長寿ですが、特に女性は90歳まで生きるケースも少なくなく、その分老後資金の準備が必要になります。 では繰下げたほうがいいのか?といえば、そうとも限りません。年金繰下げには「損益分岐点」という考え方があります。これは「何歳まで生きれば得できるのか」という計算のこと。 例えば、本来65歳で受け取れる年金を70歳まで繰下げた場合、その間に万一のことがあってこの世を去るようなことがあれば、本人は1円も年金を受け取れません。このケースで65歳から受給した時より得できるのは、81歳ぐらいまで生きた場合です。 81歳となると、男性の平均寿命とほぼ同じです。5年の繰下げで42%年金が増額されるとはいえ、結果的に得できるかは一種の賭けともいえそうです。 また、平均寿命以外に「健康寿命」を考慮する必要もあります。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、平均寿命との差は約10年。健康寿命は女性が75.38年、男性が72.68年、女性が75.38年です。 人によって差異はあれど、誰でも加齢に伴い体のあちこちに不具合が生じるようになり、病気のリスクも高まります。そのため健康寿命を意識して老後や年金プランを考えることも不可欠でしょう。例えば、こんなケースで繰下げを後悔してしまうケースもあります。
取り返しがつかない…「繰下げを心底後悔」
佐藤博さん(72歳)は離婚歴があり独身です。65歳からもらえる予定の年金額は月13万円程度でしたが、思い切って5年間の繰下げをすることを決めました。その理由は、やはり長生きが怖いからです。 繰下げで年金受給のない5年間は、きわめて質素に暮らすようにしました。買い物はできるだけ安く、友人からの誘いも基本はお断り。多いとはいえない貯金が減ってしまうことが恐ろしく「やむをえない」と考えたのです。一方でストレスを抱えて働きたいとは思わず、アルバイトなどはせずに過ごしました。 ようやく5年がたち、70歳で念願の年金受給がスタート。増額により年金は18万円強に。これで長い老後も大丈夫そうだ」……そう思った矢先、佐藤さんを病が襲います。 朝起きると身体のしびれを感じた佐藤さん。さらに物が二重に見えるという異常事態に。しかし、独り身で身近に誰かがいるわけでもないため判断が遅れます。結局1日ほどたってから「ただことではないかもしれない」と、自らタクシーを呼び病院に駆け込んだのでした。 診断の結果は脳梗塞。リハビリで改善はしたものの半身に麻痺が残りました。さらに佐藤さんを打ちのめしたのが、入院先に見舞いに来てくれるような友人がいなくなっていたことです。節約しなければと5年間周囲との交流を控えていたせいで、自分がこんな状態になっていることを伝えられる相手を失っていたのです。 佐藤さんはここにきて、長生きの不安ばかり考えて貴重な60代を過ごしたこと、そのために繰下げをしたことを後悔しました。 「年金を普通に受け取っていれば、こうして病に倒れても楽しい思い出はたくさん残ったはず。時間は取り戻せない。果たしてこれが正解だったのか?」 そう考えて涙しました。その後、佐藤さんは勇気を出して自分から電話をしたことで、友人との交流が復活。周囲の支えを受けながら暮らしているそうです。 年金が増えていたおかげで病に倒れてからの生活の不安が軽減されたため、結果として繰下げは間違ってしなかったのかもしれません。ですが、佐藤さんは倒れてから1年以上たった今でも繰下げをしてよかったのか自問自答しているとか。 繰下げには、社会保険料や住民税の負担増の可能性や家族がいる場合に加給年金を受け取れなくなるといったデメリットもあります。もちろん受給額が大きく増えるというメリットはあるものの慎重な判断が必要だといえそうです。 参考 日本年金機構「老齢年金の制度」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/index.html 厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life23/
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