相続税において税務署が一番見つけたいのは「名義預金」。「郵便貯金はスルーされる」はウソ…気をつけるべき税務調査のポイント
「郵便貯金はスルーされる」はウソ
「郵便貯金は申告しなくても大丈夫」と考えている人がいます。 郵便局には税務調査は入らないという噂がありますが、それはウソです。 今は昔の物語となってしまいますが、かつて郵政省対大蔵省の戦いの時代がありました。そのころは大蔵省が郵政省に配慮していたこともあります。縦割り行政の弊害ともいえますが、今はそんなことはありません。 そんな都市伝説にだまされないようにしてください。
名義預金発見のため、経歴を詳細に調べ上げる
手っ取り早く隠された預貯金を見つけるため、税務署は被相続人の経歴を徹底的に調べます。 どんな学歴でどんな仕事に就いていたか、会社の規模、出世コースに乗ったか乗れなかったか、どんなスピードで昇進したか、転勤があった人の場合、それぞれの場所に何年いたのか……それを知るだけで生涯所得がどれくらいだったのか推測でき、そこから割り出して「これくらいの預貯金があってもおかしくない」と考えます。 「それにしては申告書に上がってきた預貯金の額が少ない」という場合、もう一段ギアを上げてさらなる調査へと進んでいきます。 たいていの場合、人はお金を隠したいとき、自分が今いる場所から物理的に遠い場所に隠そうとします。私たちは「遠隔地預金」などと呼んでいるのですが、福岡に赴任した人が、そのあとも各地を転々としたけれども、福岡に残した銀行口座にボーナスの一部を入金していた、などということがあるのです。 だから税務署は赴任先のすべての銀行の調査をします。そのためにまず経歴を押さえることが最重要課題となるわけです。 文/天野隆、税理士法人レガシィ 写真/shutterstock
---------- 天野隆(あまの たかし) 1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て、1980年から現職。『やってはいけない「実家」の相続』『相続格差』(青春新書)他、103冊の著書がある。 ----------
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