低価格帯に注力し始めたセブン 「コンビニ絶対王者」がシフトチェンジを余儀なくされたワケ
コンビニ各社が「低価格弁当」に注力し始めた
「うれしい値!宣言」では、チルド弁当や手巻きおにぎりなどのフレッシュフード分野で65商品、セブンプレミアムなどのPBで205商品、計270商品を展開しています。セブンは自社の価格戦略を「松竹梅対応」と表現しており、これらの商品は「梅」に該当するといえるでしょう。 今までのセブンは「竹」を中心に「松」を投入して、売り上げを伸ばしてきました。しかし今後は「竹」を中心にしながらも「梅」を強化して、生活防衛意識の高まっている消費者の志向に適応する狙いです。 中でも代表的な商品が、手巻きおにぎりとチルド弁当です。7月14日までツナマヨおにぎりは151円、紅しゃけおにぎりは189円だったところ、15日週からはともに138円へと変更しました。その結果、おにぎりの販売数量と販売金額は、6月と比較してともに1割以上の増加となっています。 手頃な価格に消費者が反応していると分かったことで、チルド弁当でも価格を変更。399円で販売していた「麻婆丼」「五目炒飯」「バターチキンカレー」を、内容量を変えずに348円としました。これらに代表される300円台の低価格弁当が、セブンの店頭に続々と投入され始めています。 ちなみに、コンビニ各社ではどのような低価格弁当があるのでしょうか。図に整理してみましょう。 従来はローソンストア100の一強だった低価格弁当ですが、昨今はセブン以外のコンビニも含めて百花繚乱の状況です。各社ともに、低価格弁当を客数増の入り口商品として強化しているのだとうかがえます。
若者の「コンビニ離れ」をどうするか
コンビニ各社がこれほどまでに、低価格弁当を強化しなければならないのはなぜでしょうか。単刀直入に「コンビニ離れ」といえる現象がここ数年続いてきたことに起因します。特に若者で顕著です。 現在、日本のコンビニ業界は成長期を通り過ぎて安定期、中にはすでに衰退期に入っていると表現する人もいます。大きな理由は、全国のコンビニ店舗数がここ6年間でほぼ横ばいだからです。 2018年度に全国のコンビニは5万5979店舗ありました。それが2023年度は5万5657店舗と、0.6ポイントの減少です。セブンのみが店舗数を増やしていますが、その他は店舗数を伸ばせていません。店舗数を増やして売り上げを上げてきたコンビニが、いよいよ曲がり角にきているのです。 中でもセブンは「ほとんど毎日」利用していた客が2017年度に18%いたのに対し、2023年度には14%弱に減少しているなど、利用者の来店頻度が落ちていることの対策として、さまざまな業態や商品の開発を進めています。 さらにセブンの年齢別客数構成を少し長いスパンで見ると、客層が明らかに変化していることも見て取れます。 30年前は20歳未満が20%、20~29歳が37%と29歳以下の客層が過半数を占めていました。それが2023年度になると20歳未満が7%、20~29歳が15%と29歳以下の客層は2割程度になり、構成比にして35ポイントも減少しています。 一方で増えているのが40歳以上です。40~49歳、ならびに50歳以上の利用者はこの30年で大幅に増加し、客層の6割を占めるまでになっています。この30年間でセブンの年齢別客層の主役は若者から中高年へと大きくシフトしており、これこそセブンが伸び悩む理由です。ただ、この問題はセブンにとどまらず、コンビニ全体の共通テーマといえるかもしれません。 そんな中でセブンは低価格商品、特に若者層を取り込めるアイテムである、おにぎりやチルド弁当などで低価格商品を展開することによって、若者の来店頻度を向上させ、全体の客数を上げようとしています。実際に値下げをした「麻婆丼」「五目炒飯」「バターチキンカレー」は、過去3カ月弁当類を購入していなかった人の購入率が2割を超え、さらに30代以下の構成比も2割近くになるなど、若年層の購入率が上がっているようです。