事業承継はこれからのビジネスチャンスたり得る?日本の「サーチファンド」先駆者に聞く
――これからサーチファンドを目指す人へのアドバイスをお願いします。 小林「私からは二つあります。一つ目は、目の前の仕事をしっかりやり切ってほしいということです。前職時代、私自身は長期的なビジョンを持って仕事していたわけではないのですが、振り返ると今の仕事に生きる経験が多かったと感じています。現在取り組む仕事が一見今後のキャリアに無関係に感じられたとしても、今後のキャリアの礎となる可能性があります。なので、目の前の仕事にコミットすることは自分の可能性を広げることだと捉えていただきたいですね。 二つ目は、現在のキャリアを離れても応援してくれたり、相談できるようなつながりを持つということです。実際に私も、最初の調達は前職の先輩に相談させてもらいましたし、取引先だった経営者からの応援があったことが今の活動につながっています。こうした自分のキャリアのステークホルダーをつくる重要性を感じてもらえればいいなと思います」 洲崎「私からは『一歩踏み出す』という具体的なアクション起こす、ということを伝えたいです。私たちにも『サーチファンドをやりたい』という相談を多くの方からいただくのですが、実際に活動を始める方はほとんどいません。多くの方はサーチファンドに魅力を感じながらも、さまざまな不安を前にして踏みとどまってしまいます。しかし、その不安は『一歩踏み出す』ことでしか解消できないと思います。私はサーチファンドという仕組みはその踏み出した勇気に応える、面白さやリターンがあると信じています。なので、サーチファンドに興味が少しでもある方は、ぜひ経営者や投資家に会ってみるなどの具体的な行動に進んでいただきたいです」 これまで親族が会社を経営していない人にとって、「事業承継」という選択肢は一般的でなかったが、今後「サ―チファンド」が広がっていくことによって、経営者を目指す人にとって選択肢の一つになっていくのかもしれない。特に経営者の高齢化が問題となっている日本においては、事業承継を行うことでビジネスチャンスを獲得していくという可能性が増加することも予想されるため、「サ―チファンド」の事例は増えていくことだろう。今後どのような「サーチファンド」が誕生し、事業承継した企業でどのような事業拡大の事例が生まれていくのか、注目していきたい。 ※1 中小企業白書(2024) https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/know_business_succession.html ※2 EBITDA:税引前利益に、特別損益、支払利息、および減価償却費を加算した値