非日常への期待感を象徴するグローブ・トロッターのスーツケース【栗山愛以、モードの告白】
スーツケースの出番は年に数回くらいしかないうえに、人目に触れるのは家やホテルと空港間で、持ち歩く時間はかなり少ない。そしてそれを持つ時はもれなく機内でくつろげるようなラフな格好をしています。ですから、日常使いのバッグとは違って見た目よりも機能性重視でいいのかもしれません。 しかし、私にとってスーツケースは荷物を運搬するためだけの「道具」ではない。いつもより好みを抑えなければならない装いの代わりに、海外という非日常への期待感を象徴するアイテムとして、最低でも10年はその冒険を共にする相棒として、それを見ただけで気分が上がるようなデザインを求めたいのです。 トロリー付きで四輪になったとはいえ、開閉が簡単だったり中にたくさん仕切りがあるわけではない。しかしそのくらいの不便は美しいデザインにはかえられません。今のスーツケースの倍くらいの値段がする「エクストララージトランク」の購入を前向きに検討してしまうのでした。 TEXT BY ITOI KURIYAMA 栗山愛以(くりやまいとい) 1976年生まれ。大阪大大学院で哲学、首都大学東京大学院で社会学を通してファッションについて考察。コム デ ギャルソンのPRを経て2013年よりファションライターに。モード誌を中心に活動中。