【蛯名正義コラム】モレイラのどこがすごいのか?調教師目線だからわかること ダービーの典ちゃんもすごかった!!
【蛯名正義コラム】 東スポ読者の皆さま、1か月のご無沙汰でした。調教師の蛯名です。 5月の蛯名正厩舎は2勝、2着2回、3着3回。毎月のことながら、もっと勝ちたかった…というのが正直なところです。特にファンの皆さんから上位人気に支持してもらって、結果が出ない時は申し訳ない気持ちでいっぱい。馬の力や状態だけでなく、枠順や天気も含めて“競馬”ですから、なかなか難しいんですけど…。 そんな中で感心したのがモレイラ騎手。ウチでは5月4日東京の未勝利でダンツティアラを勝たせてくれたのですが、本当にソツがなかった。同馬はまだ気持ちが若くて乗り難しい面もあったのですが、ピシッといいところにつけて、あっさりV。プロスポーツの世界ではよく“難しいことを簡単に見せるのが本当のプロ”と言いますが、まさにそんな感じ。先週(日曜東京3R)のハニーコムも結果は4着で、その前2戦より着順を落としたわけですが、ゴール前まで猛然と追い込んだ姿は今までで一番と思える内容でした。負けたとしても“あれなら仕方ない”と納得させてくれるのがモレイラ騎手のすごいところです。 「モレイラがすごいのは誰だって知ってるよ!!」と皆さん思っていますよね? しかし自分はもともと“ジョッキー同士”という関係性だったので、現役時代は「負けてたまるか!!」なんて気持ちで彼を見ていたわけです(苦笑)。でも違う立場になって、冷静に見たり、自厩舎の馬に乗ってもらうと…やっぱり違うな、と。
見事だった典ちゃんの日本ダービー制覇
誤解してほしくないのは、日本人騎手がダメという意味ではないこと。技術はみんな高いんですよ。でもそこから先…勝利への執念だったり、目指す目標だったり、そのための努力が十分ではない人もいるんじゃないかなって。いい暮らしができれば満足なのか、日本一になりたいのか、あるいは世界一になりたいのか…。これは自分も騎手時代にはできなかったことだから、もちろん偉そうなことは言えません。でも現役だったら(川田)将雅とか、(坂井)瑠星とかは、かなり高い意識で乗ってるんだろうし、実際に海外で渡り合って結果も出している。そして同じような心構えを持つ若い子たちがどんどん出てきてほしい…。日本人騎手のOBとしては、そう願ってしまうわけです。 そういう意味で先日の日本ダービーは「やっぱり(横山)典ちゃんはすごい」と思わせる一戦でした。巧みなエスコートはもちろんのこと、皐月賞の発走直前に異変を感じてダノンデサイルの出走を取りやめた判断。そしてそれが6週後に“ダービー制覇”という形で実を結ぶなんて…。言葉にならないほどのすごさです。厩舎も含めた陣営の仕事には、ただただアタマが下がりますし、調教師として馬をつくっていくうえでも大きな刺激を受けました。典ちゃん、厩舎の皆さん、関係者の方々、そしてダノンデサイル号、本当におめでとうございました。
藤井 真俊