石炭火力発電の段階的廃止は「良い方向への転換点」を生む
石炭火力発電の段階的廃止などを義務づける規制は、二酸化炭素排出量の削減と脱炭素を実現する、一連の「良い方向への転換点」を生むのに貢献するかもしれない。最新の分析では、それが示されている。 英エクセター大学の研究チームが、非営利団体のClimate Group(クライメイト・グループ)と連携して作成した報告書では、特定の政策が、世界経済の化石燃料からの脱却を加速させ、転換点のトリガーになる可能性がまとめられている。 同報告書では、クリーン技術のコストを引き下げ、二酸化炭素排出量の多いすべてのセクターで化石燃料との競争に勝てるようにするために、引き続き一致団結してクリーン技術の配備を加速させることも求められている。 研究チームは、4つの主要セクターについて検証した。電力、暖房、軽道路輸送と重道路輸送だ。 報告書で推奨されている規制としては、先進国では2035年まで、途上国では2045年までの石炭火力発電の段階的廃止などが挙げられる。 分析によれば、そうした規制をきっかけに、次の転換点、すなわち「蓄電池を備えた新型太陽光発電」のコストが、既存の石炭または天然ガス火力発電の運用コストを下回るポイントへと向かう動きが加速するという。 報告書ではそのほか、自動車販売台数におけるゼロエミッション車の割合を増やして、2035年までの100%達成を義務づけることや、暖房設備販売数におけるヒートポンプ式の割合を増やして、2035年までに100%達成を目指すよう求める取り組みに力を入れることも推奨されている。 研究チームによれば、そうした規制による義務づけはドミノ効果を生み、他のセクターにおける変化も加速させるという。 エクセター大学のティム・レントン教授はオンライン記者会見で、今世紀の世界の平均気温上昇を摂氏2度未満に抑えるための「現実的に信頼できる唯一の道」は「抜本的な加速アクション」だと話した。 「セクター内や各国内だけでなく、他のセクターでも転換を促進できるようなかたちで、良い方向への転換点を連鎖させる。その可能性を、どうにかして見つけ出さなければならない」とレントンは話した。 「拘束力のある規制が、最も効果的な政策アプローチであるのは明らかだ。そうした規制の迅速な導入を、全世界の政策決定者に求める」とレントンは続けた。「それができなければ、人的なコストも経済的なコストも大きなものになってしまうだろう」 筆頭著者のフェムケ・ナイセ博士によれば、自動車のゼロエミッション規制は、世界的な移行に関して「スーパー・レバレッジポイント(てこのように、小さな力で大きな変化を起こせるポイント)」になる可能性が最も高いという。 例えば、そうした規制をきっかけに、中古電気自動車バッテリーの市場が成長し、電力網のための蓄電などの別の目的に転用されるようになる、とナイセ博士は述べる。 「こうした政策をすべて同時に実施することで、さらなる排出量の削減が可能だ」とナイセ博士は記者会見で話した。 「我々の結論では、各セクターの移行を一つずつ進めるのではなく、すべてを同時に実施した場合の削減幅は2.5%になる。これは、現在のベトナムの総炭素排出量に相当する」