かつての香港高級リゾート、今は安さと静けさが魅力-Open House
(ブルームバーグ): 香港で最も奇妙な場所の一つ「シーランチ(Sea Ranch)」は、1970年代に富裕層向けに建設された。リゾート施設として破綻してしまった今では、富裕層にとって香港で最も買いやすい不動産を提供している。
例えば、海を見渡せる1250平方フィート(約116平方メートル)のアパートは530万香港ドル(約1億円)で買える。近くの外国人居住区であるディスカバリーベイでの同じ規模の住宅と比べると半値以下だ。
何が問題なのか。ランタオ島の人里離れた場所にあり、香港島に直接向かう交通機関はなく、商店も医療施設もない。ジャングルに囲まれたゴーストタウンという評判も、そう外れてはいないかもしれない。
政府が3年間の低迷に耐えてきた香港住宅市場を復活させよう取り組む中、シーランチのオーナーらは安価な価格設定が、かつて繁栄していたこのコミュニティーへの関心を高めることを期待している。
シーランチはまったく違う形になるはずだった。1975年に初めて売り出されたとき、このビーチサイドの開発は、都会の喧騒(けんそう)から逃れたいエグゼクティブとその家族のための究極の保養地とうたわれた。
ハチソン・ワンポアが建設したこのプロジェクトは当初成功を収めた。1979年の完成前に200戸全てが売約済みとなった。海外旅行が困難で費用もかかり、住宅地にクラブハウスが存在しなかった当時、シーランチは貴重なオアシスを提供した。
クラブハウスの思い出
香港最大のプライベートプールやレストラン、バーを備えた広大なクラブハウス、テニスコート、ヘリポート、専用ビーチ、香港島への定期高速船サービスなどが自慢だった。
今日に至るまで道路網はなく、孤立しているが故に、このリゾートは人であふれかえる香港での特別感を保証していた。
フレイヤ・ジャイルズさんは幼い頃、オープン間もないシーランチに4年間住んでいた。
子供たちは日没までに家に帰ることを条件に、ヘビを追いかけたり、岩から飛び降りたりして、自由に走り回ること許されていた。クラブハウスのきらびやかなミラーボールの下でのディナーも思い出すという。