日本の製造業が生き残り、資源循環型の経済を実現するためには
◇災害や紛争から大きな影響を被らない、頑健なサプライチェーンの構築を 多くの産業で生産のグローバル化が進んできました。世界各国に工場を持っている日本の自動車メーカーも、材料や部品の多くを日本から調達しています。見掛け上は現地調達が9割、日本からの輸入が1割ですが、現地の企業が日本から部品を仕入れ、付加価値をつけて納めているケースも多くあります。1次サプライヤー、2次サプライヤー、3次サプライヤーと階層をたどると、どこかしらで日本の企業が絡んでおり、実質の現地調達は7割ほどです。逆に言えば、それを送り出している日本の部品産業や素材産業は強いということなのです。 グローバルサプライチェーンが複雑化してきているなか、自然災害や疫病、政治的紛争などによって、供給できなくなり、製品の生産供給販売に大きな影響を与えることが大きな課題となっています。 新型コロナウイルス感染症の影響で、1年弱、ガス給湯器が供給されない事態となったのは、まだ記憶に新しいところです。実は最終の組み立ては日本で行っていたものの、ベトナムにあった配線系の工場がロックダウンし、組み立てるのに必要な部品が入らなかったことが発端でした。2~3カ月後には、ベトナムの工場は再稼働できたものの、今度は、日本でつくっていた配線用のコネクターをベトナムに送れなくなり、作業が進められなくなったといいます。 このように、どこか一つ切れたらモノづくりができない、複雑なグローバルサプライチェーンが多くの国のさまざまな産業で築かれています。どこかで災害や紛争などが起きたとき、どこに影響が出てくるのか、すぐにはわからないほどです。東西冷戦の終結やベルリンの壁崩壊、中国の改革開放を経て、自由な貿易体制のなかで培われた生産の仕組みを、日本の企業がどう見直していくか。何らかのショックが起きても大きな影響を被らない、すなわち頑健なサプライチェーンの構築が求められています。 合理化のためだけでなく、リスク回避のためのグローバル化も視点として必要になってきています。ただ、供給拠点を複数持つとコストがかさみます。リスク回避はできても競争力がなくなり潰れてしまっては意味がありません。大幅なコストアップにならないよう、うまくリスク回避を考えるのが今後、あらゆる製造業で考えなければならない大きな課題です。