“屈辱のベンチスタート”から宇佐美貴史が決めた同点弾。ガンバ愛をエネルギーに変えて「もう一度、ポジションを奪いにいく」
巻いて、落としたFK。「イメージ通りに蹴ることができた」
より攻勢を強めた宇佐美に、千載一遇のチャンスが訪れたのは82分。果敢に仕掛けた山田が、町田ゴールの正面からやや左、距離にして約20mと絶好の位置でファウルを獲得した。 直後に町田ベンチも動く。黒田監督はバスケス・バイロンに代えて、192cm81kgのサイズを誇る国士舘大卒のルーキー、望月ヘンリー海輝をデビュー戦のピッチに送り出した。 直接FKに対する壁の高さを、さらに補うための交代。町田は望月を中央に、左右にドレシェヴィッチとチャン・ミンギュを配置する、高くそびえる5枚の壁を形成した。しかし、山田がファウルを獲得した直後から、自分が蹴る、といった雰囲気を漂わせていた宇佐美は意に介していなかった。 「壁が高かったので、その上から巻いて落とすしかないと。自分の思うところへ蹴れば入ると思っていたし、実際にイメージ通りに蹴ることができた。前日練習でいい感じで蹴れていたので、昨日のまま蹴れればと思いながら、ボールをセットした。常にああいうボールを蹴れているわけではないし、練習でも本当にたまに出るくらいで、ああいうボールをチョイスすること自体もなかなか少ないけど、それでもやるしかないとトライして、成功したのはよかったと思う」 ほぼぶっつけ本番と言ってもいい弾道は、阻止しようと飛び上がった町田の壁の中央、最も高い望月の頭上を越えてから、カーブの軌道を描きながら急降下していく。187cm84kgの巨躯を誇る谷がダイブし、必死に伸ばした右手もまったく届かないゴール左隅へと吸い込まれていった。 ジュビロ磐田でプレーした昨シーズン限りで引退した、遠藤保仁の直接FKをほうふつとさせる弾道。今シーズンから古巣ガンバのコーチを務める遠藤の存在を問われると、宇佐美は「特に教わっているわけではないので」と言及しながら、まだまだ成長する余地があると前を見すえた。 「動いているボールをキックするのはもともと自信があったけど、止まっているボールへのキックもデュッセルドルフのときにすごく練習させられた。ただ、もう少し質を上げないといけないし、セットプレーからもっと点が生まれるようにしないといけない。去年蹴っていたユウキ(山本悠樹、現・川崎フロンターレ)もいなくなったので、もっともっと自分に比重がかかってくるので」