GDPはもう古い…日本がG7で提案した「新しい経済指標」のメディアが報道しない「革新的すぎる」中身
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第3回 『襲い掛かる「GDPショック」…しかし多くの日本人が知らない、「GDPが国の豊かさを示せない」理由』より続く
尺度探し
GDPの限界を踏まえ、経済規模ではなく生活の質や幸福度を測る試みもあるにはある。 国際機関による取り組みに限っても、経済協力開発機構(OECD)の「より良い暮らし指標」や国連開発計画(UNDP)の「人間開発指数」がある。 平均寿命や教育水準など、経済以外の要素を組み込んだのが特徴だが、GDPと比べて言及されることは圧倒的に少ない。また、どの要素をより重視するかは人によって異なるため、皆が納得する共通尺度をつくるのはそもそも不可能に近い。 熊本県は「県民総幸福量」の調査を2012年から始めている。夢を持っているかや将来に不安がないかといった「幸福量」を構成する要素を特定し、総合的な幸福度を100点満点で指数化するという意欲的な試みだ。ほぼ毎年、18歳以上の3500人を無作為に選び調査しており、ブータン政府が公表している国民総幸福量(GNH)を参考にしたという。 だが、この調査は県民にすら広く関心を持たれているとは言いがたい。熊本県企画課の岩井政樹は「調査の認知度よりも、幸福度そのものを高めていくことが重要だ」と訴える。