フェラーリ「488ピスタ スパイダー」が1億1055万円という高額落札の理由とは? 決め手は1006キロの走行距離にありました
オプションパーツの装着と走行距離がキーとなった
2024年3月1日~2日、RMサザビーズがアメリカ・マイアミで開催したオークションにおいてフェラーリ「488ピスタ スパイダー」が出品されました。オプションのカーボンパーツを装着した、ワンオーナーの同車の走行距離はわずか1006km。早速、オークションの結果についてお伝えします。 【画像】可能な限りカーボンパーツを装着! ワンオーナーのフェラーリ「488ピスタ スパイダー」を見る(全41枚)
488GTBよりも90kg以上軽量なボディ
フェラーリのヒストリーで、記念すべき50番目のオープンモデルとなったのは、V型8気筒エンジンをリアミッドに搭載する488シリーズの最終進化型ともいえる488ピスタに設定された488ピスタ・スパイダーだった。 ベースとなったクーペ・ボディの488ピスタが2018年のジュネーブ・ショーだったの対し、スパイダーは市場の大きさを意識するかのように、同年8月にカリフォルニアのモントレー・カー・ウイークで開催されたクエイル・モータースポーツ・ギャザリングがお披露目の場として選択され、フェラーリの狙い通りに多くの観衆から熱い視線を注がれる存在となった。 オープンモデルというと、フェラーリにかぎらずクーペよりもラグジュアリーなキャラクターを想像しがちだが、実際に488ピスタ・スパイダーの走りを体験すれば、このモデルには通用しない俗説であることがすぐに理解できる。 リアミッドに搭載されるエンジンは、クーペモデルと同様に、3.9LのV型8気筒ツインターボ。専用のカムシャフトを与えるなどのチューニングを施したことで、最高出力は720psを発揮し、最大トルクも770Nmにまで達している。組み合わされるトランスミッションは7速のF1デュアルクラッチで、コーナリング時にはドライバーはブレーキとステアリングの操作に集中することができる。 さらに驚かされるのは独自のハードトップによるオープントップ構造を持つにもかかわらず、その車重はクーペの488GTBより軽量に抑えられていること。フェラーリが公表した車両重量は1385kgで、これは488GTB比で90kg以上軽量な数字になる。 ドライビング・ダイナミクスにおいても、さまざまな進化が488ピスタ、そして488ピスタ・スパイダーにあった。その一例がフェラーリ・ダイナミック・エンハンサーの初採用で、これは装着されるカーボン・セラミック・ブレーキを自動的に調整することで限界域でのハンドリングを向上させ、コントロール性と予測可能性を高めるためのデバイス。488ピスタ・シリーズは、スーパースポーツとして確実な進化を遂げたモデルだったのだ。 今回のマイアミ・オークションには、いずれも2020年式の488ピスタ・スパイダーが2台出品されていたが、ここではその中から、74万2000ドル(邦貨換算約1億1055万円)で落札されたモデルを紹介しようと思う。この落札価格はRMサザビーズ社の提示したエスティメートを10万ドル弱も上まわるもので、その理由は走行がわずか1006kmにすぎなかったことにある。 またフロント・スポイラーやリアディフューザーに始まり、フロント・ベント、エンジン・カバー。Bピラー・トリム、インテリア・トリム等々、可能なかぎりカーボンファイバーのオプションパーツを選択していること。 さらにフル装備ともいえるメニューを希望した出品者が(つまりこのモデルはワンオーナー車ということになる)購入当時フェラーリに支払った購入総額は56万7557ドルにも達したというから、今後のプレミアムを考えれば、この落札価格も納得できないわけではない。ちなみにもう1台の488ピスタ・スパイダーは、同じ2020年式で購入時の価格が51万4951ドル。今回のオークションでは59万9000ドル(邦貨換算約8923万円)で落札されている。
山崎元裕