「取るだけ育休」男性が家事や育児しない実態…企業は取得後押しするが「役に立たない」と望まない女性も
育児への積極的な参画を促そうと、九州・山口の企業でも男性の育児休業(育休)の取得を後押しする働き方改革が進んでいる。一方で、一部は育休中も家事や育児をしない「取るだけ育休」となっている実態もあり、解決への取り組みが課題だ。(南佳子) 【グラフ】男性の育休取得率…政府目標は85%
成長をそばで実感
「夜泣きを徹夜であやすこともあり大変だったが、成長をリアルタイムでみることができた。育児は夫婦で一緒にするものと認識できた」。福岡市の会社員男性(29)は長男(生後6か月)を抱き上げた。5~8月に育休を取得。うち1か月は勤め先の子育て支援策「育児トレーニング制度」の特別有給休暇(有休)を充てた。
看護師をしている妻(26)も「積極的に関わってくれて体の回復に専念できた。私が職場復帰しても、夫婦で協力できそう」とほほえんだ。
男性が勤める浄水器メーカー「タカギ」(北九州市)が制度を導入したのは2021年。それまで、収入減や昇級・昇進に影響するのではとの不安を理由に育休を取らない男性社員が多かったという。そこで男女ともに最大20日間の特別有休を付与。人事評価に影響しないと周知した。男性の育休取得率は3年で92ポイント増の95%に急上昇した。
育休中社員の業務をフォローする同僚に手当を支給し、取得しやすくする企業もある。
74人が働く建築・土木設計の巽設計コンサルタント(山口県光市)は6月、月1万円を支給する「育休サンキュー手当」を創設。光井謙二社長(65)は「休みやすい職場にすることは、長期的には人材確保の効果を見込める投資だ。子育てを応援する会社の本気度を見せたい」と意気込む。
政府目標は男性育休取得率85%
厚生労働省によると、23年度の女性の育休取得率84・1%に対して、男性は30・1%。政府は30年の男性の取得率を85%とする目標を掲げる。
だが、後押しが進む一方、育休中も家事や育児をしない状態を示す「取るだけ育休」が課題となっている。積水ハウス(大阪市)の「男性育休白書2024」によると、女性約1000人の約4割が「夫は取るだけ育休だった」と答えた。