「創業家だから社長」ではない、サントリーHD次期社長の変貌。酒文化の灯を消さない覚悟
「お酒の文化の灯」を消してはいけない
ザ・プレミアム・モルツの戦略部長として、2008年にサントリーを初めてビールシェア国内3位に躍進させた立役者だけあって、ビール事業に対する思い入れは強い。 「60年以上前、寡占状況だった業界に最後発で挑み、苦しい中でも決してあきらめずに品質を磨き続け、戦い続けてきたビール事業はサントリーの魂だと思っています」(鳥井氏) 鳥井氏にプライベートで何を飲むのか聞くと「ビールです。プレモル」と即答。それでも「3日に1日は休肝日をつくっている」という。 若者の飲酒離れをはじめ飲酒人口の減少が指摘される昨今。鳥井氏は適正飲酒の大切さを指摘しながらも、お酒を嗜む文化の重要性を指摘する。 「適量飲酒の大切さを伝え続けることだけでなく、お酒ってこんなに楽しいんですよと、お酒の持つ素晴らしい価値を伝え、お酒と共生する社会、お酒を嗜む文化を創造していきたい。 お酒を飲む人、飲まない人、みんながそれぞれのドリンクを持って、笑顔で豊かな時間を楽しんでほしいという『ドリンクスマイル』を伝えていきたいと思います」(鳥井氏) サントリー社長としては引き続き、世界の名だたるグローバルメジャーと伍していく上で必須となる国内酒類事業の盤石化と売上収益の向上、そして収益力強化をより確実にするために、2023年現在約7800億円の国内酒類売上高を「2030年に1兆円」達成という重責を担っていく。 そのためにも「お酒の文化の灯(ひ)を消さないことが一番大事」と鳥井氏は言う。 一方で、世界情勢は目まぐるしく変化し、世界各地で自然災害も頻発するなど、事業の先行きが見通しにくい時代でもある。鳥井氏は会見で次のように展望を語った。 「そんな時代だからこそ、さまざまなことを考えすぎて縮こまってしまうより、思い切ってやりたいこと、目指したいことをやんちゃに楽しみながら進めていきたい。まだ世の中に存在しない新しい価値を生み出そうと勢いよく攻めていく会社にするために、まずは私自身が最も楽しく働きたいと思います」(鳥井氏) 編集部より:初出時、2023年の国内酒類売上高を約7300億円としていましたが、正しくは約7800億円でした。お詫びして訂正いたします。2024年12月20日10: 02
高阪のぞみ,湯田陽子