<パキスタン学校襲撃>生徒ら148人を殺害したタリバンの目的は? 放送大学教授・高橋和夫
パキスタン軍との戦闘が激化
さてパキスタン・タリバンとパキスタン政府との間で交渉が続いていましたが、この夏にタリバンがカラチの空港を襲撃した事件などを受けて戦闘が激化しました。パキスタン軍は部族地域を空爆し、さらに陸軍部隊を送り込んでタリバン側を追い詰めています。 今回のテロは、こうした攻撃での多くの民間人の死傷への報復であるとタリバンは言明しています。この学校が狙われたのは、軍が経営しており、軍関係者の子弟が多く学んでいるからでしょう。そして、比較的に警備が手薄だったからでしょう。最初から、できるだけ多くの生徒の殺害を目的とした残虐さは、報復したいとの気持ちの強さを示しているのでしょうか。またタリバンが追い込まれている軍事的な状況の厳しさの反映でしょうか。このテロは、報復の意味と同時に、軍事的には劣勢にはあるものの、まだまだ反撃する能力をタリバンが保持しているとのメッセージでもあるでしょう。 イラクやシリアにしろ、あるいはパキスタンにしろ、しっかりと政府が統治していない地域が存在すると、そこに過激派が入り込んで根拠地を築いてしまうという現象が多発しています。グローバル化で、そうした情報が瞬時に世界に伝えられます。しかも人々の移動が容易になっています。したがって政治の真空地帯があれば、直ちにテロリストが入り込んでしまうのです。テロを防ぐ前提は、きちんとした統治でしょうか。実は、発展途上諸国では、これが一番不足しているのです。言葉を変えるならば、清潔で能率の良い政治が行われるようになれば、それは発展途上からの卒業を意味しています。