高橋大輔が振り返る初の「氷艶」ラブシーン「今の自分だから表現できること」
豪華な俳優陣の中、主役であるプレッシャー
その「氷艶 月光かりの如く」では、歌手の平原綾香さん、元宝塚トップの柚希礼音さん、俳優の福士誠治さん、波岡一喜さんなどお芝居の先輩たちと競演した。 「共演した俳優さんたちは、それぞれの個性が強く、すばらしかったです。歌に鳥肌がたったり、ついつい見てしまうオーラだったり。そういう彼らに圧倒されましたが、僕は主演という立場でそこで勝っていかないといけない。それは大変なことですよね。そこを考えてしまうと、一歩も前に進めないので、できないことはできないからと割りきり、今できることをやるしかない! と腹をくくった。役に選ぶのも、評価するのも自分ではなく周囲の人で、終わってみて、『あいつダメだった』といわれれば、もう次はないわけですから」 そういう決意の後、本番で見せたスケートはもちろん、「化けた」といわれる演技は、座長としてみんなをひっぱっていくものだった。義理の母である藤壺を演じた平原さんとの抱擁があったラブシーン、そして、光源氏のライバルである朱雀の君を演じた、現在は宇野昌磨選手のコーチであるスケーター、ステファン・ランビエールさんとの演技など本番はどうだったのだろう 「今考えると、あれはラブシーンというほどのことはなかったですね(笑)。あの時はあれが自分には精いっぱいでしたけど。ステファン演じる朱雀の君とのシーンや、対抗心やライバル心みたいなものは、実は演技というより素でいけました。亞門さんが、役を決める前に、僕の現役時代のライバルはだれか? と聞いていました。それでステファンが、劇中でライバルとなる朱雀の君にキャスティングされたみたいです。 ステファンがどう思っているのかはわかりませんが、僕自身にとってステファンは憧れの存在であり、勝てないかもしれないと思いながらも勝ちたいと思う存在です。光源氏が朱雀の君に抱く思いに近かったので、そのあたりは自分の気持ちとして入りこみやすかったですね。ただ、公演は自分のテリトリーであるスケート以外のことが多かったので、プレッシャーがすごくて、知らず知らずのうちに、いつも以上に消耗していたと思います」 練習から本番を通し、高橋さんが感じたのは、共演者たちのやさしさと努力だったという。 前述した、高橋さんが本読みで真っ赤になってうまくできなかった時も、主演の彼に対し、「自分も最初はそうだった」と共感したり、優しい瞳を向けていた。 「みんな稽古の時からめちゃくちゃ応援してくれて、指導もしてくれました。本当にすばらしい方たちで、スケートの練習も忙しいスケジュールの中、一生懸命されていましたし。実際ほぼ初めてやる方たちにとって、スケートの練習は大変なことです。でも皆さん本当に努力なさって。どの世界でも上に行く方たちは真摯で、人間的にすばらしいのだとわかりました。逆にいうとそういう方たちが上にいけると実感しました」