<東京都知事選>立候補者の1日ルポ ── 鳥越俊太郎候補(前編)
舛添要一前東京都知事の辞職を受けてはじまった東京都知事選は31日、投開票日を迎えた。各候補者はここまで、東京各地に足を運んで聴衆に手を振り、マイクを握って熱弁をふるってきた。立候補者の一人、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)は、職業柄、多くの人の話を聞いてきた経歴から、「聞く耳を持っている」とアピールしたほか、介護の充実や待機児童の解消などを掲げて選挙戦を戦ってきた。鳥越氏のある1日を追った。
「皆さんの話をお聞きして、今後に生かしたい」。東京都知事選も後半戦に入った7月23日土曜日の午前10時すぎ、JR四ツ谷駅近くで開かれた待機児童・保育事故問題の会合に出席した鳥越氏は、冒頭でこうあいさつした。 会合では、認可保育所に落ち続けたという母親や、子供を保育中の事故で亡くした父母らが体験談を語るとともに、認可保育所の拡充や、保育士をより手厚く配置するなど保育の質的向上の必要性を訴えた。この間、鳥越氏はときおりうなづきながら、話をする父母をじっと見ながら耳を傾けていた。自身が取材するときもこのような感じなのだろうか。 父母らの話のあと、鳥越氏は新たに都立保育園を設置するという構想を示すとともに、意見を求めたところ、ある母親は「正直言って、それは話題性でしかない」などと率直に答えるとともに、新たな制度をつくるより、今ある認可保育所の拡充が有効と改めて訴えた。これに対し、鳥越氏は、「都有地を保育所用に確保して、運営は区にお願いする方法も考えられる」などと返した。
会合の終了後、鳥越氏の囲み取材がはじまるが、記者が多数むらがって鳥越氏が見えない。やむなくビデオ撮影をあきらめ、背後に回って話を聞く。鳥越氏は「保育士1人あたりで保育する子供6人という過密な現状のなかで事故が起きているという話も聞いたので、その点も改めて解決していかねばならない」となどと決意を述べていた。 次の会場への移動のため鳥越氏のスタッフが囲み取材の終了を告げ、鳥越氏は退席した。会場に残っていた江東区の女性(36)は、「率直に聞いてもらえて大変うれしい」と喜ぶ一方、「候補者の皆さんに共通で聞いてほしい」と切実さをにじませていた。