在日中国人の教育熱に「温度差」が出てきたワケ 子の出生時から計画立てる人、「普通でいい」人
「通いたい小学校」を決めてから不動産を購入
現在、日本に住む中国人は約78万8000人(2023年6月、法務省の統計)に上る。本国の中国では6月7日、8日に高考(大学入学統一試験)が行われているが、中国人といえば教育熱心というイメージを持つ読者が多いのではないだろうか。しかし実際は在日歴が長い中国人と、近年来日したばかりの中国人では、子どもの教育についての考え方にかなり温度差があるのだ。具体的な事例をもとに見ていこう。 【写真を見る】「在日歴によって教育熱の差がある」と語る中島恵氏 東京・文京区に住む40代の中国人女性は20年以上前に来日し、都内にある有名私立大学の修士号を持つエリート。夫も中国人で、都内で会社経営をしている。夫婦には一人娘がいて、文京区内の有名小学校に通っている。中国人の間で「3S1K」と密かに頭文字で呼ばれている、彼らが憧れている学校の1つだ。 「娘をこの学校に入学させるため、私は娘が生まれたときからコツコツ計画を立て、数年前に文京区に引っ越してきました。文京区にはいい学校が集中しているので、競争率が激しいと思ったのですが、たまたまいい不動産物件が購入でき、その学校の学区に住むことができたのでよかったです。まだ娘は低学年ですが、SAPIX(学習塾)にも通わせていて、中学受験する予定です。娘は日本生まれ、日本育ちなので日本語はネイティブ。成績もつねに上位です」 彼女は満足げな表情でこう語る。中国では「重点学校」と呼ばれる、いい学校がある学区の不動産は「学区房」と呼ばれ、不動産価格が非常に高い。中国で「学区房」の購入は難しいが、日本ではそこまで競争が厳しくないため、「助かった」と思ったそうだ。 この女性と同様のことを考える中国人や外国人が多いせいか、文京区教育委員会のデータによると、区内の公立小学校20校の外国籍の児童数は、2019年には194人だったものの、2023年には389人と倍増している。
「教育に熱心な在日中国人」のコミュニティーが活発
彼女は夫とは別のビジネスを行っているが、中国に住む中国人と同様、子どもの教育について関心が高い。情報交換のため、在日中国人同士で形成している、教育に関するウィーチャット(中国でよく使われるSNS)のグループに入っている。そこでは、「どの学校の評判がいいか、どの学習塾がいいか」といった情報が日々飛び交っており、女性も朝起きてから夜寝る直前まで、グループ内のやり取りをチェックするという。 SNSの利点で、何かわからないことがあってグループに問いかければ、数分後には誰かが返信を書いてくれるので、とても便利だという。中国国内に住む中国人さながら、娘が学校や塾の宿題をするのにも深夜まで二人三脚で付き添っている。 筆者の知る限り、この女性は教育熱心な在日中国人の典型だ。彼らの多くは1990年代後半~2000年代に来日し、現在30~40代。子どもは小学生から中学生くらいで、まさに受験期にある。 この女性もそうだが、彼らはこの先もずっと日本で生活していくつもりで、子どもに高いレベルの教育を受けさせ、日本の有名大学に進学させたいと願っている。 今、そのもう1つ上の世代の在日中国人(50~60代)の子ども(20~30代)が日本の大学を卒業し、日本の大手企業に就職、活躍しているが、それに続く世代といっていいだろう。一部は日本国籍を取得して日本名を名乗っていることもある。読者の同僚や取引先にも、日本生まれ日本育ち、日本語がネイティブで高学歴な中国人が増えてきているのではないだろうか。 一方で、ここ1~2年に来日した中国人は、必ずしも、これまでの在日中国人と同様の考え方を持っている人ばかりではないようだ。