尹、このままでは植物大統領、辞任か弾劾しかない【コラム】
ファン・ジュンボム|論説委員
大統領の弾劾や任期の短縮という単語を口にするのに何らはばかりのない政局だ。31日には、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領がミョン・テギュン氏に「公認管理委員会に、キム・ヨンソンが予備選挙の時に一生懸命やったから(公認)してやってくれと言った」と語っている肉声が公開され、世間はまたも「このままでは弾劾か」とざわついた。 祖国革新党は真っ先に「弾劾の大衆化に努める」と宣言した。チョ・グク代表は、ソウル瑞草洞(ソチョドン)での大統領弾劾集会(10月26日)の参加者が3千人以上にのぼったことに触れつつ、「キリの葉が1枚落ちれば秋が来たと思うと言うが、私は今、キリの葉が落ちたと思う」と語った。脈絡は異なるが、与党でも弾劾が頻繁に言及されるようになっている。ユン・サンヒョン議員は30日の「保守の革新と統合」と題する討論会で、「現在の状況を見ると、2016年にはじまった朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾の時とまったく同じだ。デジャブ、既視感がある」と述べている。8年前は与党が親朴と非朴に分裂したため大統領弾劾を阻止できなかったが、今の与党分裂も弾劾を招く恐れがあるため、尹錫悦大統領とハン・ドンフン代表は対立を解消すべきだ、というのがユン議員の主張だ。尹大統領は任期短縮改憲を実行すべきだと提案する政界の重鎮や論客も増えている。 実際に、現在の状況は朴槿恵大統領の弾劾当時と類似点が少なくない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と朴槿恵大統領の弾劾過程を比較研究したイ・チョルヒ元大統領府政務首席は、「大統領弾劾決定の要因の分析」と題する論文で、「与党分裂」などのいくつかの要因をあげている。今の与党は尹大統領とハン代表が回復不能の関係にあり、党は親尹と親ハンとの対立で薄氷の上にある。与党が直前の総選挙で敗北したため少数与党国会をかかえる政府であることも、8年前と今との共通点だ。このような構図であればあるほど「大統領のリーダーシップ」が発揮されなければならないが、朴大統領と同様、尹大統領も議会を敵視し、対決的な態度を示している。それだけに弾劾訴追に弱い。「大統領の人気」の面でも、尹大統領は支持率より不支持率の方がはるかに高い。「スキャンダル」は弾劾を触発する重要な要素だが、ミョン・テギュン氏を端緒としたキム・ゴンヒ女史の候補公認介入疑惑などが加わり、波紋が広がっている。 しかし、まだ相違点もある。8年前には朴槿恵、チェ・スンシル・ゲートに対する検察の特別捜査本部の捜査を通じて大統領の違法行為が確認され、その後、弾劾訴追と審判が行われた。一方、今は検察などの捜査機関が尹大統領夫妻を徹底的に保護しているため、捜査結果として出てきたものはまだない。市民の怒りも、まだ8年前のように街頭での大規模なろうそく集会に火がついてはいない。また、弾劾で保守が壊滅し政権を明け渡した記憶も生々しい与党が、再び弾劾に同調する可能性は、現在のところは非常に低い。 このすべてが「今の時点では」という話であり、今後どのように展開するかは予測が難しい。しかし、11月10日に任期の折り返し地点を迎える尹大統領は、残りの2年半を、日々「任期短縮または弾劾の話」を聞かされながら過ごすのか。大統領としての権威と信頼が底をついている中、尹大統領に何ができるだろうか。このままでは、残された道は(1)植物大統領(2)辞任(3)弾劾だ。 尹大統領が適当な一時しのぎと時間稼ぎで危機を乗り切ろうとすれば、「植物大統領」になってしまうのは自明だ。大統領が医療、年金、労働、教育の4大改革を語っても空しく聞こえ、外交・安保の非常事態での発言も100%信頼できない。大統領が嘲笑の種になり、国政の動力が失われ、国民がストレスを感じ続ける2年半となることを考えるとぞっとする。 植物大統領の状態で国民の忍耐が限界に達すれば、尹大統領は任期を全うせずに辞任しなければならない状況に追い込まれうる。それさえも拒否すれば、民意の爆発で弾劾への道に立たされうる。 植物大統領、辞任、弾劾はいずれも国家的不幸だ。ならば選択肢は明らかだ。キム女史問題を含む国政の全面刷新しか答えはない。キム女史問題について、国民の目から見てもやりすぎだと思えるほど、断固たる措置を取るべきだ。尹大統領とキム女史の謝罪は基本だ。持ち上がる疑惑が解明できるよう、捜査に積極的に協力するのだ。問題になることがないなら、特検も拒む理由はないのではないか。政府がこの危機に至るまで、大統領とその配偶者のそばで「おこぼれ」を楽しんだだけの参謀と公職者たちも変えるべきだ。2年半は何とか耐えるには長過ぎるが、新たな出発をするにはまだ遅くはない。 ファン・ジュンボム|論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )