ケルシー・マン監督 & プロデューサー マーク・ニールセンが語る 作った僕たち全員の思春期が詰まっている『インサイド・ヘッド2』
自分自身の感情を見つめることで、わかり合えるものがある
池ノ辺 この作品、『インサイド・ヘッド2』では、ライリーが思春期を迎え、それに伴ってさまざまな大人の感情も芽生えてきます。その思春期の状況がすごくリアルに感じました。お二人はどのような思春期を過ごされたんですか? マン 作った僕たち全員の思春期が入っています。中でも僕自身のが一番多いかな (笑) 。“シンパイ”を中心に作ったのは、自分たちの経験を反映させ、ライリーが何をどう悩み、そこをどう乗り越えていくのか、というところに関わっている。理由があるんです。 池ノ辺 監督は思春期の頃、心配ばかりしていたんですか? マン すごく自分に厳しかったみたいです。この映画を作るにあたって、自分の写真を全部デジタル化しようと、昔の写真を引っ張り出してきたんです。5歳の誕生日の写真には、みんなにお祝いされて100%ハッピーな僕がいました。それが、8歳、11歳、13歳と成長するに従って、だんだんそうはいかなくなってくる。13歳の誕生日の写真なんて、笑ってもいない自分が斜めからケーキを見てるだけでした(笑)。「ハッピーバースデー」の歌すら嫌でしたね。ちょうど自意識がすごく強くなってきた頃で、自分が注目されるのが嫌だった。今になって、自分は何がそんなに嫌だったんだろう、苦痛だったんだろうとよくよく考えてみると、「僕にはこれだけのお祝いをしてもらう価値があるのだろうか」という気持ちがあったように思います。そんな僕の経験、気持ちも、全部この作品に入っています。 池ノ辺 私の思春期の時はいつも怒っていました (笑) 。“イカリ”が強かったんですね。でも、この映画で、その“イカリ”を周りの他の感情たちがサポートしてくれているのが見えて、それにすごく救われたし、嬉しくもなりました。ですから、それこそ今思春期を迎えている子たちがどうしようもない怒りに翻弄されているとしたら、この映画はすごくサポートになるだろうなと思います。 ニールセン そうなれば嬉しいですね。私たちは、この映画を、年齢や性別にかかわらず、多くの人たちが感情のレベルで共感してくれるようなものにしたいと、そう思って作りました。人によっては“イカリ”に惹かれるだろうし、“シンパイ”に惹かれる人もいるでしょう。人それぞれだと思いますが、それでもそこを糸口に、人間の深い感情のレベルでつながれるんじゃないかと思っています。 マン 本当に、観る人によって、お気に入りの感情も違うんですよね。 池ノ辺 大人になっても私は結構怒っているので、この映画を観てから「“ヨロコビ”よ、来い!」と意識するようになって自分を落ち着かせられるようになりました(笑)。 マン それはいいですね。ただ、怒りというのは、それ自体は悪いものではなく、むしろ正当な感情であると思うんです。それについては、今回、僕たちの作品で監修もしてくれた心理学者のリサ・モデールさんもいろいろ話してくれました。 ニールセン 彼女が言っていたのは、メンタルヘルス、つまり精神的に健全であるというのは、常によい気分でいることとは違うということです。大事なのは、適切な時に適切な感情を感じて、それをうまくコントロールするということなんです。 マン とりわけ怒りというのは、あなたを攻撃する何かからあなた自身を守ってくれるものでもあるわけです。こんなの公正じゃない、酷いよ、こんなことは好きじゃない、やめてほしい、そういう思いを伝えてくれるもので、そういう意味ではすごく真っ当な感情ですよね。ただ、これを発動するに相応しい時というのはあって‥‥。 ニールセン 車を運転している時なんかに怒ってしまうのはちょっと危険ですからね(笑)。