テイラー・スウィフトは米大統領選挙の行方を左右するか
広まるテイラー・スウィフトの陰謀論
一方で、共和党はテイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を表明することを強く警戒している。トランプ前大統領は11日に、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を支持する選択肢は「あり得ない」とし、彼女を強くけん制した。トランプ大統領は自身の大統領時代に、著作権の規定を改めた音楽近代化法を「テイラー・スウィフトやほかすべての音楽アーティストのために」2018年に署名した実績を強調した。「大金を稼がせた男に対し、不誠実であるはずがない」としたうえで、「バイデンはテイラーのために何もしなかった。ひねくれたバイデンを支持するなどあり得ない」とした。 さらにトランプの支持者は、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を再選させるための「陰謀」の一翼を担っている、という見方を世間で広めている。そうした戦略はかなり影響力を持ち、米モンマス大学が今月実施した世論調査では、テイラー・スウィフトがバイデン大統領を11月の大統領選で再選させる「政府の陰謀」に関わっているとの回答が、18%にも上った。
バイデン大統領は「バドライト現象」を警戒か
実際にテイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を正式に表明すれば、トランプ支持者らは、この陰謀論を一層喧伝し、彼女への攻撃を強めることになるだろう。共和党は今までも、著名人や人気商品に対して、人々の怒りをあおるキャンペーンを何度も繰り返してきた。 こうした点を踏まえ、テイラー・スウィフトがバイデン大統領の支持を正式に表明することを控える可能性があるだろう。またバイデン陣営も、彼女がバイデン大統領の支持を表明することが、むしろ再選の逆風となってしまうことを警戒している可能性がある。その背景にあるのが、昨年の「バドライト現象」である。 昨年、米国のビール「バドライト」の販売会社が、著名なトランスジェンダーのSNSインフルエンサーを広告に起用したところ、共和党の選挙陣営がこれに批判的な不買運動を起こした。その結果、バドライトの売り上げに大きな打撃となってしまった。同様のことが再び起こる場合、テイラー・スウィフトによるバイデン大統領の支持は、むしろバイデン大統領にとって逆風となってしまう可能性がある。 大統領選挙の行方を左右する可能性があるテイラー・スウィフトの影響については、現時点ではよく分からないというのが実態だろう。 (参考資料) 「バイデン氏、テイラー・スウィフトさん支持で有利なるか」、2024年2月10日、NIKKEI FT the World 「テイラー・スウィフトさん、保守派のリベラル攻撃の的に」、2024年2月5日、NIKKEI FT the World 「米大統領選:バイデン陣営、TikTok開設 若者浸透狙い「二重基準」批判も」、2024年2月14日、毎日新聞 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英