政治壊滅 この危機は「対米従属に甘んじる政府」と「自立を志向しない国民」の合作だ!白井聡が徹底解析
◇戦後最大級の「政治壊滅」を白井聡が徹底解析 裏金問題以降に露呈した壊滅的な政治状況の底に、閉塞しきった社会のありようが透視できる。そう喝破する白井聡氏が、この国の根腐れの構造を冷徹に暴いていく。その根本には、属国であり続けてきた戦後日本の歪みがあった。 ◇岸田首相は国民の自画像だ このままの道を行けば、待つのは死だけ いよいよ日本の政治と社会は進退窮まった。かつてないほどに政治への不満は高まっている。政治の不毛と閉塞(へいそく)を非難する声は高まるばかりだ。だがしかし、政治の酷(ひど)さは、部分的には制度の欠陥に帰すことも可能だが、マルクスの概念を用いて言えば、政治は上部構造だ。その土台には腐敗して閉塞した社会があり、その行き詰まりが政治に反映している。したがって、その本質が摘出されなければならないのは、今日の日本社会の行き詰まりなのだ。 だが、手始めとして現在の政治状況を見ておこう。昨年から引き続いてきた自民党の裏金キックバックの問題は、自民党議員の襟を正させるどころか、完全に政争の具と化した。下った処分の根本的な異常性を見てみるがよい。国会の政倫審で、安倍派幹部の政治家たちは、不正なカネの還流がどのようにして再開したのか、ついに誰も語らず、口を揃(そろ)えて「自分のせいではない」と述べた。問題はこの証言の真偽と処罰の関係だ。この証言内容を真実だと党が認めているのならば、処分する根拠がない。反対に、証言が虚偽であると認めているのならば、真相が何であるかを明らかにし、それを根拠として処分を下さなければならない。ところが、根拠はまったく曖昧なままに、処分は下された。何があったのか一向に明らかでなく、明らかにする気もなく、関係者の誰も責任を認めていないが、それでも処罰するというのである。法治国家においてあってはならない蛮行にほかならない。 かくして、処分はおよそ原則を欠いた恣意(しい)的なものとなった。その目的は、この問題にけじめをつけたというポーズの演出と、それ以上に、岸田首相ほか有力者の政治力学のなかで、生贄(いけにえ)として失脚させる者を決める一方、懐柔して自らの影響力のもとに取り込むべき者を決める、という権力闘争のゲームを演じることでしかない。どれほど不正が暴かれ、腐敗が明らかになっても、問題に対して誠実に対処しようとする意志は皆無である。