スポーツ界が自ら「稼げる」業界になるために【松田丈志の手ぶらでは帰さない!~日本スポーツ<健康経営>論~ 第10回】
一方で、台湾のスポーツくじや諸外国で進むスポーツベッティングには、試合の不正操作(八百長)、依存症、選手への誹謗中傷など、対応すべき課題が多々あります。試合の不正操作はスポーツの公正性を損ない、ファンやスポンサーの信頼を失いますから、絶対にあってはなりません。EU諸国では条約で試合の不正操作について規定し、刑事罰化も進んでいる中で、今後、日本がスポーツくじを拡大する上で、不正操作のリスクに対する対策は不可避であると考えています。 依存症対策の各国の事例としては、依存症と診断された個人からのアクセス制限や購入金額の上限の設定、依存症の治療と支援を行なう団体もあります。また、誹謗中傷対策では人工知能(AI)の活用も進んでいます。IOCはパリ2024オリンピックにおいて、AIを活用した誹謗中傷対策システムを導入しました。AIによるリアルタイム監視によって、大会期間中、35以上の言語に対応し、2,400万件のSNS投稿を分析、そのうち、約15万2,000件を「潜在的な中傷」と判定し、1万200件以上を実際の「中傷投稿」として確認しました。それらの投稿は各SNSプラットフォームに報告され、多くが選手に見られる前に削除されました。これらの作業を人海戦術で進めるのには限界があり、AIの活用は今後も進められていくことと思います。 以上のように、スポーツくじ拡大のためには、台湾のスポーツくじの法制度やフランスの主催権の制度など、諸外国の法制度を参考にして、日本の文化に即した適切な制度をつくっていくことが重要です。スポーツ界だけで解決できる課題ではないだけに、スポーツ団体、民間企業、政府機関との連携を強化し、「稼げるスポーツ界」を実現したいと考えています。 文/松田丈志 写真提供/株式会社Cloud9