推し活は認知症予防に効果? 「急に頑固に」「入浴を面倒がる」…それ、イエローカード! 物忘れだけじゃない。危険信号や注意点を専門家に聞いた
「認知症を正しく知ろう」と題した公開講座が10日、鹿児島市のライカ南国ホールで開かれた。精神科医で、鹿児島大学病院にある県基幹型認知症疾患医療センターの石塚貴周副センター長(44)が講演し、認知症を疑うポイントや脳活性化のヒントを語った。要旨を紹介する。 【写真】〈関連〉認知症予防のポイントをチェックする
認知症は主にアルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性、前頭側頭型の四つ。脳疾患で起こる脳血管性以外は、それぞれ特定のタンパク質が脳神経細胞を破壊させて起こる。 記憶力低下や情緒不安定などの症状は、細胞に情報を届ける脳神経伝達物質の働きが低下して現れる。機能回復が期待できる段階で気付けるかが重要になる。認知症手前の軽度認知障害(MCI)にある時に、予防や治療に取り組むのが望ましい。 MCIは日常生活に支障はないが、「昔はそんな人ではなかった」と思う行動が出る。物忘れだけでなく人柄の変化もポイント。頑固になったり周囲への配慮が減ったり、外出や入浴を面倒がるのも黄信号とされる。他にも嗅覚の低下は記憶を担う海馬が衰えている可能性がある。歯もかみ合わせが悪かったり歯周病を放置したりすると、認知症リスクが高まる。 ただ高齢者の意欲低下は認知症ではなく、うつの可能性もある。頭やおなか、足など体の痛みなどがあり、病院を回っても原因が分からなければ、うつも念頭に専門医を訪ねてほしい。
世界保健機関(WHO)は、認知機能低下を防ぐ12項目のガイドラインを定めている。まず定期的な有酸素運動。1日40分のウオーキングなどを週3回、1年続けると、脳の会話や記憶をつかさどる部分が2%増えたとの報告がある。 禁煙は長年続けないと効果がないと思いきや、4年未満でもリスクが低下したとのデータがある。睡眠は夜は5~8時間、昼寝は30分以内が最もリスクが低い。ただ睡眠時に無呼吸がある人は要注意だ。 趣味でリスクが減ると言われる。わくわくすることを集団で楽しむのが大事。アイドルやタレントの「推し活」もその一つになる。 県内には離島を含め12カ所の認知症疾患医療センターがある。おかしいなと思ったら、まず専門医に相談を。鹿大病院にある県基幹型認知症疾患医療センターも地域や民間のサービスと手を取り合い、支えていきたい。
南日本新聞 | 鹿児島
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