プーチン訪朝でもロ朝の軍事的重要性は薄い、インフラ整備など経済協力も発展・拡大するか未知数
こういった質問に対する正解を、われわれはこれから先、数十年間は知りえないかもしれません。こういったことに関する資料は、かなりの極秘扱いとされるためです。 それでも、私はロシアが北朝鮮の核技術開発を支援する可能性は高くないと考えます。その基本的な理由は、ロシアは世界の核保有国の中の1つですが、核保有国としての特権を多く持っているからです。 しかし、核保有国が増えれば増えるほど、ロシアをはじめとする従来の核保有国の特権が持つ力は弱まります。ロシアは核の拡散を支持する国ではありません。
ICBM(大陸間弾道ミサイル)をはじめとする弾道ミサイルの技術移転は、核技術の移転よりも行われる可能性が少し高いかもしれません。でも、それほど可能性が高いものではありません。 それは、ロシアが北朝鮮に移転した技術が「ロシアと敵対関係にある第3国」へ流出する可能性を恐れており、北朝鮮がロシアの技術を利用して、その機能が同等レベルの武器を生産し、国際市場に販売する可能性があるためです。歴史を振り返ると、この2つのケースはその前例がなくはありません。
それだけではありません。このような技術移転は核拡散を助長するものです。反対に、核拡散と関係の薄い技術や、そう簡単にはまねできない技術を移転する可能性はあります。 例えば、潜水艦建造技術や偵察衛星に関する技術については、ロシアは北朝鮮に移転できます。それでも、ロシアの立場から見て最も合理的な態度は、北朝鮮から砲弾と弾薬を輸入する際に、技術を移転してあげることよりも、そのまま単純に外貨で決済することでしょう。すなわち、ロシア側は砲弾と技術移転の交換という物々交換的な取引よりは、純粋に受け取った砲弾に対しておカネをあげることを好むということです。
――プーチン大統領は訪朝の直前、北朝鮮・朝鮮労働党の機関紙『労働新聞』に「ロシアと朝鮮民主主義人民共和国:年代をつないでいく友好と協力の伝統」と題する文を寄稿しました。これは彼の外交戦術としては珍しいように見えますが。 そこはわかりません。ただ、この寄稿はロシア側が提案したというよりは北朝鮮側が提案したものだと思えます。それは、2019年に中国の習近平国家主席が訪朝した際に、習主席が『労働新聞』に寄稿したことを想起させます。