1億総スカンの「流行語大賞」 それでもユーキャンは辞めないワケ
今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞に選ばれたのは「ふてほど」だった。この言葉はTBSの人気ドラマ『不適切にもほどがある』を略したものだが、SNSでは「そんな略称聞いたことない」「流行した記憶がない」といった声が大半を占め、国民的な共感を得られたとは言い難い。 【画像】直近20年間における、流行語大賞を受賞した言葉。ある一点から、明らかに傾向が変わっている 実際にドラマそのものは話題になったものの、「ふてほど」という略称が独自に流行していた事実はほとんど確認できない。このような選出が続く中で、流行語大賞そのものへの疑問が浮上している。 筆者の予想では、Netflixで大きな話題を呼び、「もうええでしょう」などといったキャッチーなフレーズがちまたで多用された「地面師」が本命で、次点として「闇バイト」になるのではないかと踏んでいた。しかし、残念ながら、そのような予想は裏切られてしまったかたちになる。 しかし、統計データを確認すると、やはり「ふてほど」が選ばれた経緯は不可解だ。
なぜここまで実感と乖離したのか?
検索ボリュームの推移を視覚化する「Google トレンド」によれば、「ふてほど」の検索ボリュームは年間を通じて、「地面師」の9分の1、「タイミー」の7分の1、「闇バイト」の2分の1にすぎない。 しかも、流行語大賞の選出を機に「ふてほど」のボリュームが急増していることから、戸惑いながら「ふてほどって何?」と検索する人々の混乱ぶりもうかがえる。 時代を映す鏡としてのシンボルを担ってきた流行語大賞だが、ここまで定量的なデータと乖離する結果は妥当なのだろうか。 確かにインターネットの検索ワードが世の中の全てではない。しかし、百歩譲ってインターネットの外のどこかのコミュニティーで「ふてほど」が流行しているとして、そのコミュニティーが全てかのように「流行語大賞」と認定することもまた不合理ではないか。 そう考えると、もはや「国民全体が納得する流行語」という概念自体が破綻している可能性すらある。特に、SNSや動画配信サービスの台頭により、興味や関心が多様化し、全世代に共通する話題を見つけるのが困難になっている。