再送-「兄はどこに」、手掛かり求め悪名高いアサド政権刑務所に泊まり込むシリア女性
(敬称を統一しました。) Jehad Shalbak [ダマスカス 11日 ロイター] - シリアのアサド政権が反体制派の攻勢により崩壊したというニュースを耳にした時、ハヤト・アル・トゥルキさん(27)は真っ先に「と殺場」として悪名高いセドナヤ刑務所に向かった。そこで拘束されているはずの兄や5人の親戚の生存を祈りながら道を急いだ。 それから4日間、トゥルキさんは同刑務所の隅々まで探して歩いたが、いまだに彼らの所在について手掛かりを得られていない。人権団体によると、同刑務所では拷問や処刑が頻繁に行われていた。 「もちろんここで寝ている。家には一度も帰っていない」とトゥルキさんは言う。兄やおじ、いとこが見つかるのではないかと期待していたが、彼女のように刑務所を探して歩く他の何十人ものシリア人の親族同様に、拘束されていたはずの彼らの姿はみつからない。 トゥルキさんが刑務所で見つけた今年10月1日付の文書には、さまざまなカテゴリーの収容者7000人以上の名前が記載されていた。 「彼らはどこにいるのだろう。この刑務所にいるはずではないのか」と彼女は言う。解放された収容者の数は、リストの人数をはるかに下回るという。 反政府勢力の電撃的な進撃で、父子2代で50年続いたアサド政権が8日に崩壊した直後に、同政権の無慈悲な収容所システムに拘束されていた数千人の収容者が解放された。その多くは、何年も前に彼らが処刑されたと思っていた親族に涙で迎えられた。 セドナヤ刑務所には、絞首刑に使われたとみられる絞首縄が残っており、訪れた者に収容者がここで過ごした暗い日々を思わせた。 「刑務所全体を捜索した。独房に入って5分も経たないうちに息苦しくなってしまった」 トゥルキさんはこう話すと別の独房に入って所持品を探し始めた。 「これは兄の所持品だろうか。彼の匂いがするだろうか。それとも、こっちが彼の毛布だろうか」──。 トゥルキさんの兄は、14年前に拘束されたままだという。 人権団体はシリア国内の刑務所での大量処刑について報告しているほか、絞首刑になった囚人用の新たな火葬場がセドナヤに設置されたと米国が2017年に公表している。拷問行為は広く記録されている。 アサド政権を打倒した反政府勢力の指導者ジャウラニ氏は11日、アサド政権下で拷問や殺害に関わった者は誰であれ追跡され、恩赦は論外だと述べた。 「我々はシリアで彼らを追跡し、逃亡した人々の引き渡しを各国に求め、正義を実現する」と、同氏はシリア国営テレビのテレグラムチャンネルで発表した声明で述べた。 それは、兄を見つけるという希望が薄れつつあるトゥルキさんにとって、ほとんど慰めにはならなかった。 「釈放された囚人たちの写真を見ると、骸骨のようだった。これでは兄がどんな顔をしているのか分からない」と、トゥルキさん。 「ここには人がいたはずだ。これらの衣類や毛布は誰のものだというのか」