2023年に人口が最も減少した国はウクライナ 日本の減少率は世界で10番目
2023年に世界で最も急速に人口が減少した国はウクライナだった。ロシアの侵攻により、ウクライナの多数の国民が祖国を追われることになったためだ。紛争は難民だけでなく犠牲者も生み出すことで、一国の人口動態を変える強力な力となり得る。 人口減少は、その国の経済停滞や地理的な孤立、住民の国外流出などを物語っていることが多いが、出生率の低下や高齢化も大きな要因となる。 2023年に世界で唯一人口が減少した大陸は欧州大陸で、同地域の人口は前年比で0.2%減少した。国連経済社会局(DESA)人口部の資料によれば、欧州では2021年以降、人口減少が続いている。2023年に世界で最も急速に人口が減少した10カ国のうち、先述のウクライナ以外にも6カ国(ギリシャ、サンマリノ、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アルバニア、コソボ)が欧州に集中していた。欧州の人口動態の負の連鎖に影響を及ぼしているのは主に出生率の低下と高齢化だが、バルカン半島からの人口流出も大きな要因となっている。 同半島に位置するギリシャは、2023年の人口減少率が世界で3番目に大きな国となった。ギリシャ国家統計局は2024年初頭、人口崩壊の危機に警鐘を鳴らした。人口約1000万人の同国は、2050年までに100万人の人口を失うと予測されている。そうなれば、政府の歳入や労働市場などに深刻な影響が及ぶ可能性がある。2011~21年までの10年間で、ギリシャの出生率は30%も落ち込んだ。欧州のみならず世界の多くの国々で、社会全体の変化が出生率の低下を引き起こしている。だが、ギリシャの場合はそれに加え、2009年に起きた財政危機と、それに続く緊縮財政策により、若者が家庭を築く意欲を削がれ、仕事を求めて国外に流出するなどして、人口減少に拍車がかかったとみられている。
アジア諸国の開発水準に大きなばらつきがあるため全体で見ると人口増加率は0.6%
このような衝撃的な出来事は、上記の他の欧州諸国でも確認できる。1990年代初頭に共産主義政権が崩壊し、それに続く残酷な紛争を経験したボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アルバニアでは現在、ディアスポラ(国外離散)の規模が自国の人口比で世界最大となっている。これらの国々では国外に流出した住民の数が多く、流出は現在も続いているため、人口の年齢構成が大きく変化している。 ■島国からの人口流出も深刻に 地理的に孤立し、経済的な機会に恵まれない島国の多くでも、住民の大規模な国外離散が現実のものとなっている。2023年に世界で2番目に急速に人口が減少した国は、太平洋に浮かぶ島国のツバルだ。人口わずか1万人ほどのツバルは、温暖化による海面上昇のために、地球上で最初に消滅する国の1つとも言われている。気候変動によって、住民の国外流出は今後さらに進む可能性が高い。ツバルの外務相は2021年、同地域の住民が共有する絶望感を表現するために膝上まで海水に漬かりながら世界に向けて演説し、島の窮状への注目を集めたことで有名になった。 人口規模が小さい小国の場合、統計的な要因により、他の国と比べて人口減少幅が大きくなりやすい。だが、特に島しょ部では、統計的な影響以上に住民の国外流出が深刻化している。 人口減少国として有名な日本は、減少のペースが世界でも10番目に速いとされた。隣国の中国や韓国も近年人口減少に転じ、アジアの人口問題にも注目が集まっている。とはいえ、アジア諸国の開発水準には大きなばらつきがあるため、アジア全体で見ると2023年の人口増加率は0.6%だった。これは米州の成長率とほぼ同じ水準だ。米州には全般的に人口動態の大きな停滞はないものの、特に急増している国もない。一方、大洋州とアフリカでは2023年、人口増加がさらに加速した。
Katharina Buchholz