広島V3のなぜ?黄金期作ったドラフト戦略、育成、外国人補強の秘密を探る
予算の限られている広島は、巨人や阪神と違い、FA補強は行わないため、チーム強化の柱は、生え抜きの育成と外国人補強の2本になる。その外国人もチームに必要な要所にうまく配置され成功した。 投手陣では先発で左腕のジョンソンが10勝5敗、中継ぎでは、ジャクソンが47試合に投げて防御率2.82、24ホールド1セーブ、特にドミニカのカープアカデミー出身の左腕・フランスアが5月に支配下登録されると、勝利の方程式に組み込まれ、8月には18試合登板のプロ野球の月間最多登板記録に並ぶなど、46試合登板、防御率1.69、19ホールド1セーブの大活躍を演じた。打者では7年目のエルドレッドが不振で2軍生活が続いたが、カープアカデミー出身のバティスタが、打率.250、25本、55打点の結果を残している。 「外国人は国際部がしっかりとやっている。設立して28年になるドミニカのカープアカデミー出身選手と元メジャーの即戦力の2本立て。ドミニカは、一時期、選手がいなくなっていたが、4年前に施設が再整備され力を入れることになった。ドミニカに関しては、まず2軍で慣れさせて、日本で育てるという考え方で、バティスタ、メヒア、フランスアらが大きな戦力となった。特に古沢さんの存在が大きい。お父さん、おじいさん的な存在で、何かあれば古沢さんが相談に乗って心のケアをしている」 ドミニカにコーチとして派遣されている古沢憲司氏(70)が、彼らが日本社会に溶け込む手助けをしている。また元メジャー組に関しては、奥さんへ気配りするのが、広島の方針だという。 「力を入れているのは、奥さんへのケア。選手よりも奥さんを大事にしようという方針がある。安心してプレーに集中できるし、アメリカでのスカウト活動にも好影響が出る。広島から声のかかった選手は、必ず前にプレーしていた選手から情報を集めるが、奥さんから『街がすみやすい、チームのサポートがいい』という口コミが広がると、いい選手が来てくれるようになる」 また川端氏は、V3達成に多大な貢献をしたのは、メジャーから凱旋してV1につなげた“男気”黒田博樹と、今季限りの引退を発表した阪神から“出戻り”した新井貴浩の2人だという見方をしている。 「黒田、新井の投打のベテラン2人が戻ってきたことが大きいと思う。2人が模範を示した。黒田は、プロ中のプロ。優勝して黒田は引退、V2、V3にはいなかったが、逃げずに向かっていくという遺産はチームに残っている。ホームベースを広く使うピッチング術だ。新井は、阪神で辛酸をなめて人間的に成長した。若手に慕われ、彼のチームのために献身するという考え方がベンチ全体に浸透した」 「黒田の遺産」と「新井の自己犠牲の精神」が、若手主体のチームに浸透、団結心につながったのである。 「次から次へと若い選手が出てきている。当分、この強さは続く。4連覇、5連覇。さらに強くなっていくと思う」。川端氏は、広島の黄金期到来に太鼓判を押した。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)