広島V3のなぜ?黄金期作ったドラフト戦略、育成、外国人補強の秘密を探る
田中広輔、菊池涼介、丸佳浩の「平成生まれ」の3人が「タナ・キク・マル」でセンターラインを固め、鈴木誠也が和製4番としてドンと主軸に座るが、丸と鈴木の2人は高校時代「ピッチャーで4番」だった。 「苑田さんが強力にプッシュしていたのが丸だった。千葉経済大学附属高等学校時代に甲子園出場もあり、3年生の選抜でも丸はピッチャーだったが、苑田さんは、はなから野手で使うつもりで、『将来主軸を打てる』と推して高校生ドラフト3位で指名した 川端氏は、それぞれの担当スカウトの情報収集能力の高さも広島スカウト陣の強みだという。 「情報収集能力に長けている。スカウトが足で仕事をしている証拠だろう。例えば、田中には故障の疑惑がつきまとっていた。当時、チーム事情から即戦力のショートが欲しかった。担当の尾形佳紀スカウトが『故障は治っています。大丈夫です』と信頼性のある情報を得てきた。それで3位指名することになった」 当時、ショートのレギュラーは梵英心が守っていたが、世代交代が課題で、2013年にJR東日本から田中を3位指名で獲得、1年目から戦力になった。 鈴木誠也については巨人が上位指名してくるという情報を直前に入手。当初4位指名を予定していたが、「担当スカウトから4位では先に消えてしまうかもしれないとの情報が入って、急遽、2位にあげた」という。 投手に関しては、「オーソドックスな投手」が原則だ。 「スピード、制球、ハートの3つの基本が揃っている選手を獲得したい。変則はいらない。ここでも投げるだけで野球センスのない、9番・ピッチャータイプには、躊躇するし、速いだけ、コントロールだけ、というピッチャーも、よほどのことがない限り避ける」 いくら素材がよくても現場との連携がなければ育たない。広島の強さの理由は、好素材が入団後に、さらに鍛えられて、確実に成長して戦力となる点にある。 「カープの厳しい練習に耐えることができ、人を押しのけてでも這い上がってくるような性格か、どうかも見極める。高校生は5年をメド。近年は大学、社会人でも、よほどの選手でないと即戦力としては難しいので、1、2年は見て欲しい、育てる期間を見て欲しい、というスカウトからの要望を現場に伝えている」 そういう育成方針も徹底されている。菊池は入団2年目、丸は4年目にレギュラーを獲得したが、その背景には、当時の監督だった野村謙二郎氏の将来を見すえた采配もあった。 「野村が苦労して選手を育てることをやった。彼が種をまき、育て、その努力をコーチとして近くで見てきた緒方が花を咲かせた。球団として育成、チーム作りが継続して行われている成果だと思う」