原田美枝子、賞取り女優から笑顔が似合う母親に変身 高1で出演「恋は緑の風の中」で豊満なヌード、学校で問題視され転校強いられる
【1万本を見た映画記者 極私的スター名鑑】 女優のイメージは演じる役柄でどんどん変わっていく。原田美枝子の場合は、のめり込み演技が半端ではなく、その落差に何度も驚いた。 【写真】「舞台って面白いと思ってもらえる作品」と話す原田美枝子 映画デビューは東京都立工芸高校1年生の夏休みに出演した「恋は緑の風の中」(1974年、家城巳代治監督)だ。性の目覚めを描く作品で、豊満なヌードが学校で問題視され転校を強いられる。 17歳で主演した「大地の子守歌」(76年、増村保造監督)と「青春の殺人者」(同年、長谷川和彦監督)で映画各賞の新人賞を総なめ。黒澤明監督の「乱」(85年)や深作欣二監督の「火宅の人」(86年)などの好演も際立っていた。 やがて「愛を乞う人」(98年、平山秀幸監督)で賞取り女優の本領を発揮する。娘を虐待する母親と、愛を渇望する娘の二役を演じ分けて主要な映画賞の主演女優賞を独占。一度見ればトラウマになるほどすさまじい迫力に圧倒された。 だが「ぼくたちの家族」(2014年、石井裕也監督)では余命1週間を宣告される母親を、妙に明るく笑顔で演じた。怖い人というイメージが強烈だったので、インタビューした筆者は素顔のニコニコ笑顔に面食らった。 「若い頃は自分を褒められたい、認められたいという気持ちで突っ走っていた。でも30歳を過ぎてからは、演じる役の気持ちを伝えるのが仕事だと思うようになった。いろいろな女性の気持ちを代わりに演じているという感じです」 私生活では、1987年に歌手で俳優の石橋凌と鳥取砂丘で結婚式を挙げて話題になった。1男2女の母。長女の優河はシンガー・ソングライター、次女の石橋静河は女優。 エキセントリックな役で映画賞の常連だった原田美枝子も、笑顔がチャーミングなおばあちゃんが似合うようになった。 ■原田美枝子(はらだ・みえこ) 1958年12月26日生まれ、65歳。東京都出身。 ■垣井道弘(かきい・みちひろ) 1946年、広島県三原市生まれ。明治大学文学部卒。週刊誌「女性自身」の記者を経て、映画評論家になる。著書に「MISHIMA」(飛鳥新社)、「今村昌平の製作現場」(講談社)、「ハリウッドの日本人」(文芸春秋)、「緒形拳を追いかけて」(ぴあ)などがある。