撮影前から涙した最終回 『ウイングマン』広野健太役・藤岡真威人インタビュー
健太と自分自身の感情を重ねた最終回
◆健太と自分自身の感情を重ねた最終回◆ ――健太の気持ちを表現するうえで、大事にしていたことはありますか。 藤岡 なんだろう……。僕、『ウイングマン』に関しては感情を作っていったようなところが全くなくて。自分がどれだけ傷つこうと、世界や守るべき存在のために戦う。そんな健太の中のヒーロー像をブレさせないことを意識して、湧いてきた感情をそのまま表現しただけなんです。 ――では、健太を演じたというより、カメラの前で健太として生きていたという感覚だった? 藤岡 そうですね、演じた感覚は全然ありませんでした。僕は自分との共通点を見つけて、そこを軸に役作りしていくんですが、健太の場合は自分が好きなものを人生の軸にして、それに向かって突っ走る純粋さが、僕と同じところだと感じました。ヒーローオタクらしい言い回しや動きをするために、事前に特撮作品の研究はしましたが、内面の部分は人生の主軸をヒーローに置き換えたくらいしか、役作りらしいことはしていないです。たぶん健太って僕なんですよ。だからこそ、皆さんに「すごくハマっているね」と言っていただけるんでしょうし、健太役のお話をいただいたことは運命だったと思います。 ――藤岡さんが特に思い出深いシーンやエピソードはどこですか? 藤岡 最終回は台本を読んだときに、「なんて良い終わり方なんだ!」と泣きそうになったくらい大好きな回です。理想のヒーロー像と自分を重ねて突っ走ってきた健太が、大切な存在を守るために、ヒーローとして頼もしく立っている姿は感動しました。大切に大切に演じたいと思って、撮影の前に健太の感情を整理し、改めて役作りをして現場に臨みました。思い入れのある場面を挙げたらキリがないんですけど、一番は「アオイさんを助けて」とドリムノートに書いていくシーン。目的を果たしたのに、リメルの最後の一撃でアオイさんが倒れてしまう。その落差は演じていても、感情が追いつかないところがあって……。ドリムノートのシーンは撮影で何度か演じたんですが、そのたびに涙がぽろぽろ出てきましたね。今でもあのシーンのセリフを言ったら、撮影当時と同じ感情がこみ上げてくるくらい、自分の心に刻み込まれています。 ――そのくらい強く記憶に残っているんですね。 藤岡 はい。健太としての感情だけでなく、アオイさんを演じる(加藤)小夏さんと一緒に撮影を駆け抜けてきた、僕自身の気持ちも重ねた分入れ込んで、セリフを覚えるときから涙があふれてきました。視聴者の皆さんにとっても、心に残るシーンになっていると嬉しいです。『ウイングマン』は今振り返っても、「あのときもっとこうできていたら」という後悔はなくて。健太と同じく僕自身も俳優として大きく成長させてもらった、絶対に忘れられない作品になりました。出演することができて、本当に良かったです。 ――最後に、ドラマ『ウイングマン』を応援してきたファンに向けてメッセージをお願いします。 藤岡 まだ最終回まで放送されていないので(※取材当時)、「いかがでしたか?」と感想を聞いてみたいですね。僕は『ウイングマン』が令和の時代に、実写化という新しい形で復活したのは、本当に意味のあることだったと感じているんです。そもそも40年前に描かれたマンガ自体、現代にも響くメッセージ性が内包されていて。最初の段階から細部までこだわって作品づくりに携わってくださった原作者の桂(正和)先生、CG技術の進化、役にマッチしたキャストの皆さん……。いろいろなパズルのピースがハマって出来上がったからこそ、今の世の中に届く作品になったのかなと。観てくださった皆さんにもそう感じていただけていたら、役者冥利に尽きます。今回は全10話の30分枠のTVドラマでしたが、『ウイングマン』はもっと大きなステージでも成立する、スケール感を持った作品だと思うんです。僕としてはここで終わらせたくない。続編とかでまた『ウイングマン』に携わる機会ができたら本望ですし、そのためにはファンの皆さんの「また観たい!」という声が必要不可欠になります。これからも応援し続けてくださったら嬉しいです! <プロフィール> ふじおか・まいと 俳優。SANKIワールドワイド所属。2020年にセガ設立60周年CM「せが四郎」で俳優デビュー。最近の出演作に映画『八犬伝』、TVドラマ『君とゆきて咲く ~新選組青春録~』、『三屋清左衛門残日録』など (C)桂正和/集英社・「ウイングマン」製作委員会
佐久間 翔大