半導体業界で広がるAI格差、ASMLショックで鮮明-二極化続くか
(ブルームバーグ): 5300億ドル(約79兆2500億円)規模に上る半導体業界では、人工知能(AI)ブームの波に乗れるかどうかで、格差が広がっている。決算シーズン序盤の動向を踏まえると、その溝はさらに深まりそうだ。
オランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングのクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は7-9月(第3四半期)決算の電話会見で、「AIがなければ、市場は極めて悲惨だろう」と述べた。ASMLはAI以外の分野で需要が低迷しているとして、2025年の売上高見通しを下方修正。株価の急落を招いた。
ASMLの決算を受けて、パソコンや自動車といった主要事業の不振が足かせとなっている半導体業界の健全性を巡り懸念が再燃。米国による半導体の対中規制強化など、米中間で地政学的な緊張が高まっていることも逆風となっている。
一方、アップルやエヌビディアなどを顧客に抱える半導体の受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)は2024年の売上高伸び率見通しを引き上げ、業界を巡る不安を幾分和らげた。魏哲家最高経営責任者(CEO)はAIが成長を押し上げているが、全体の需要は「安定化」しており改善し始めていると述べた。
フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は先週2.4%下落して終了。15日だけで5.3%下げたが、TSMCの決算を受けて下げ幅を縮小した。業界内の明暗を浮き彫りにするかのように、ASMLやラム・リサーチ・コーポレーションなどの半導体製造装置メーカーが値下がり銘柄の上位に名を連ねる一方、マーベル・テクノロジーなどの半導体メーカーの一角は値上がりした。
ガベリ・ファンズのリサーチアナリスト、Ryuta Makino氏は「AIがすべてと考えるのは全く正しいため、このような乖離(かいり)は今後も続くと予想すべきだ」と指摘。こうした流れが少なくとも2025年まで続くとみている。
今週22日には米テキサス・インスツルメンツ(TI)が決算を発表する。同社のアナログチップは幅広い顧客に使用されており、注目を集めそうだ。