【特集】創業139年・老舗酒蔵〝奇跡みたいな復活〟経営不振から事業継承で再スタート【新潟】
ユネスコの無形文化遺産に日本の〝伝統的な酒造り〟が登録されるなど、今注目されているのが日本酒です。一方で日本酒離れも進んでいて、厳しい経営を強いられる酒蔵もあります。一時破産まで追い込まれながらも復活した新潟市の老舗酒蔵を取材しました。 【動画】【特集】創業139年・老舗酒蔵〝奇跡みたいな復活〟経営不振から事業継承で再スタート【新潟】 新潟市西蒲区・岩室温泉の近くにある「宝山酒造」。 12月に入り、今年の酒造りが始まりました。精米した米を洗い、水に浸します。5代目の蔵元・渡邉桂太さん。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「お米の品種ですとか、精米具合・その日の水温・その年のお米の出来によっても給水時間が変わってきます。」 渡邉さんにとって、今年は特別な酒造り、ここまでくるにはいくつもの困難がありました。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「一度途絶えてしまった分、一から作り上げていく。」 139年の歴史を持つ宝山酒造。新潟県産米でつくる看板商品『宝山』は、海外でも高い評価を受け酒蔵見学を行う観光蔵としても人気を博しました。しかし、近年進む“日本酒離れ”や“観光需要の低下”により、売り上げは30年間で半分ほどに。オンラインストアでの販売やリモート酒蔵見学などにも取り組みますが、経営状況は悪化していきます。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「2年前ぐらいでしょうかね。自力での経営は難しいと判断して、いわゆるM&Aという形で資本が入りました。」 親会社から支援を受けながら酒造りを続けてきましたが、今年に入り資金援助をめぐって親会社との関係が悪化。7月に破産手続きを開始することに・・ その後、会社としての「宝山酒造」で日本酒を造ることはできなくなり、従業員は全員解雇となりました。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「宝山酒造として約140年ほど続いてきましたので、その歴史を終わらせてしまったという悲しさというか責任という思いがあった。」 酒造りを諦めきれなかった渡邉さん。義理の兄であり、東京で和食居酒屋を9店舗経営する山口直樹さんに相談します。そして、山口さんが代表を務める株式会社fermataが100%出資する子会社として新会社を設立し、酒造りを続けることを提案してくれました。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「どういう形でもいいから続けたいっていう思いを兄と相談しまして、蔵が残せる道をなんとか探してもらって決まった時は安心した。」 新会社の名前は『たからやま醸造株式会社』。8月に設立し、2カ月後には宝山酒造の事業を引き継ぎます。12月には清酒の製造免許を新たに取得。蔵の屋号「宝山酒造」も残し、看板商品『宝山』の商標も引き続き使用できることになりました。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「社名も変わるのでラベルも一新しようと思っていて、今この漢字の『宝山』ってやってますけど、今後ひらがなメインのラベルになる。破産手続きをしたときはすべてなくなる覚悟はしていたが、今まで通り続けていけるというのがとてもうれしく思う。」 この日は、前日洗ったコメを釜で蒸していました。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「種麹を振って麹を作る最初の作業ですね。」 破産手続きの前にいた従業員も数人戻り、酒造りの再スタートを切りました。復活に合わせオンラインストアもリニューアル。今後は設備投資を強化し、時代のニーズに合わせた酒造りをしたいと話します。 ■5代目蔵元 渡邉桂太さん 「〝奇跡みたいな復活〟ができたので、そこの気持ちは忘れずにうちの蔵で最高のお酒を造るにはどういうものが必要なのかを考えて、よりフレッシュな美味しいお酒を今後皆様にお届けできれば。」