<春風と共に>智弁学園/上 目指すは「日本一」 夏の雪辱誓い、新チーム始動 /奈良
センバツの選考委員会が開かれた1月24日、五條市の智弁学園グラウンドに集まった選手たちは手塚彰校長から吉報を伝えられると、「ありがとうございました」と力強く一礼し、報道陣のカメラの前で全身で喜びを爆発させた。小坂将商監督も「甲子園出場が決まるときは、いつも鳥肌が立つ。ホッとする」と笑顔を見せた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 翌日には、白石陸主将(2年)が「浮かれてるやつはおらんと思うが、あくまで目標は日本一」とチームの気を引き締めた。 甲子園出場は夏19回、春は今回で13回目となる県内屈指の名門校。2016年のセンバツでは、1965年の野球部創部以来、春夏通して初の全国制覇を成し遂げた。2018年夏、甲子園出場を逃した智弁はその年の秋の近畿大会県予選準々決勝で天理に七回コールド負けを喫し、19年春のセンバツも逃した。大舞台から2季遠ざかった。 19年夏の奈良大会。準決勝で法隆寺国際を六回コールドで降し、決勝も高田商から12点を奪って夏3年ぶりの出場を決めた。この大会、チームでたたき出した計12本塁打は大会新記録となった。 ところが夏の甲子園・初戦の八戸学院光星(青森)戦では苦戦を強いられた。 1年生で4番に座り注目された前川右京選手は六回に2本の適時打を放ち、6点差をひっくり返す活躍。だが、同点で迎えた八回、1死一、三塁の好機では「冷静さを失っていた」と振り返る。「心も体も熱くなりすぎて前のめりになり」、空振り三振に終わった。結局、智弁学園は10―8で敗れ、前川選手は「もっといい打者になって戻ってくる」と誓った。当時の主将、坂下翔馬さん(3年)も「後輩は甲子園に戻ってきてほしい」と1、2年生に後を託した。 「大舞台を経験できたことはよかったが……」。夏の甲子園を振り返る小坂監督の表情は厳しい。前川選手を除くと、出場した1、2年生は全く打てなかったからだ。「この悔しさをぶつけて、秋の大会で結果を出すぞ」と選手たちに発破を掛ける。雪辱を誓う春。センバツで日本一を目指す新チームの練習が始まった。【萱原健一】 ◇ 3月19日に阪神甲子園球場で開幕するセンバツ。県勢は智弁学園(2年ぶり13回目)と天理(5年ぶり24回目)がダブル出場を決めた。大舞台への切符をつかむまでの両校の軌跡をたどる。