マリナーズ菊池雄星のメジャー初完封の裏に隠されていたフォーム修正努力
それは、ちょっとした気付きがきっかけだった。 「ユウセイ、テークバックを取るとき、左手が少し中に入りすぎてないか?」 アストロズ打線に4本塁打を許した8月2日の登板翌日、西武でもチームメイトだったウェイド・ルブランがその数日前に菊池雄星のブルペンを見ていて気づいたことを伝えた。 するとポール・デイビス投手コーチも、あらかじめ用意していた、いいときと悪いときの比較映像を菊池に見せた。そこには、はっきりと違いが映っていたという。菊池本人がもう少し噛み砕いて説明してくれた。 「足が着いたときの左肩の位置なんですけど、肩が平行に来るってことは日本でもなかった。足が出たときには左肩が(右肩より)低いんですけど、さらに低くなっていた」 結果として、腕が遅れて出てくる。それを「足をついたときに腕が上がってきてない」と表現した菊池は、こう続けている。 「それでヒトコンマ遅れて、弱いボールになっている」 その問題を中4日という短い時間で修正。菊池自身、「中4日であそこまで変えるというのはなかなか、しかも休みもあったので、実質3日間の中でフォームを変えるというのは難しいことだった」と認めるも、8月7日のパドレス戦では、5回を4安打、1失点、8三振の好投。菊池も試合後、手応えを口にした。 「久しぶりに、結果どうこうではなく、いいボールがいったなという充実感はある」 では、なぜ腕が遅れるのか。それがまさにルブランの指摘した点に起因している。 テークバックのどの時点で菊池の左手が中に入っていると映ったのか。ルブランに聞くと、「手を下におろしたときだ」と教えてくれた。「トップの位置へ腕を上げる前、肘が曲がるときに、こうやって手が中に入っていた」 その一連の動作を、背中の後ろに左手を隠すようにして分かりやすく示してくれたが、菊池は、「おそらく手だけで、(日本時代と比べて)10センチぐらい入ってるんじゃないか」と指摘されたそうだ。 手が中に入りすぎることのデメリットは、すでに菊池自身が解説してくれたが、似たような経験があるルブランは、「中に入りすぎていると、腕が遠回りするイメージになる」とさらにジェスチャーを交えながら、こう補足した。 「そうすると、本来はリリースでトップスピードに持っていきたいのに、その前に腕の振りが遅くなる。しかも、無駄な動きが多いから、制球が難しくなる」