社説:同姓婚訴訟判決 立法対応を強く促した
同性婚を認めない民法などの規定を巡り、東京高裁が「合理的な根拠がないのに差別的取り扱いをしている」として違憲とする判決を出した。 同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、法の下の平等を定めた憲法14条と、個人の尊厳と両性の平等を記した24条2項に違反すると指摘した。 「結婚の自由をすべての人に」を掲げて全国5地裁に起こされた集団訴訟で、今年3月の札幌高裁に続く2件目の高裁判決も違憲判断となった。 社会の多様性を積極的に認める司法判断が定着しつつある。国連の女性差別撤廃委員会も今週、日本のジェンダー平等に向けて選択的夫婦別姓の導入を勧告した。 衆院選では、野党の大半と公明党が同姓婚や選択的夫婦別姓の導入に前向きな公約を盛り込んでいた。 自民党が過半数を割り込む中、もはや政治の不作為は許されず、立法措置に向けた議論を進める時ではないか。 判決で注目すべきは、同性カップルについて初めて「配偶者」として言及したことだ。 その上で、同姓婚を巡る「新たな制度の在り方」についても言及し、男女の夫婦を前提とした現行の婚姻制度と異なるものにすれば違憲になる可能性があると指摘した。 立法に向けて具体的な制度が想定される中、原告らは「現行の婚姻制度と別扱いにすれば、それ事態が差別になる」と主張していた。判決はこれを踏まえたといえる。立法に向けた議論の枠組みとして重要な指針になろう。 各種の世論調査では「同性婚に賛成」が7割前後に上る。京都市や彦根市など、性的少数者のカップルを公的認証するパートナーシップ制度を導入した自治体は450を超えている。 石破茂首相は自民党総裁選では同性婚と選択的夫婦別姓に前向きな姿勢を見せていたが、首相就任後は慎重化した。林芳正官房長官は判決を「確定前」として最高裁判断を待つ考えを示唆した。 「伝統的家族観」から抵抗する自民党の一部保守派への遠慮が目に余る。不安定な法的地位に置かれたまま、日常生活で不利益や差別的な待遇を被っている人たちがこれ以上放置されていいわけがない。 経済界や国際社会の認識ともかい離している。国会は自覚を持って議論を始めるべきだ。