AIで宇宙の「天気」を予測するスタートアップ、発展する宇宙産業が抱える問題を解決か?
主に政府機関と研究機関に頼る、現在の宇宙天気予報
宇宙天気の監視と分析は、現在主に政府機関と研究機関で行われている。情報の供給源は、米国海洋大気庁(NOAA)と欧州宇宙機関だ。 米国の場合、実際宇宙環境を継続的に監視・予測し、情報提供を行っているのは、NOAAの一部で米国国立気象局の研究所である、宇宙天気予測センター(SWPC)だ。 SWPCは太陽、太陽圏、磁気圏、電離圏の状態を表すデータをほぼリアルタイムで観測・収集し、太陽と地球の間の環境の状態を把握・分析する。現状を過去の記録と比較し、気象モデルに似た数値モデルを使用し、時間単位から週単位で予測。宇宙天気の影響を受ける人たちに予報だけでなく、注意報、警報を送っている。
政府機関による、現在の宇宙天気予報は正確さに疑問
宇宙産業に関わる企業や政治に情報を網羅するウェブサイト、Space Newsによれば、SWPCや欧州宇宙機関は、衛星ミッションや地上観測所などからのデータを集めるが、情報自体が断片的でデータが古いことも多いという。 使用するモデルも、正確さや情報の鮮度に欠ける傾向があり、実際行おうという予測と関連がなかったり、予測時の効率を著しく下げたりとマイナス点も少なくないという。 また一般的に、現在宇宙天気予報を提供しているのが政府機関であること自体が問題視されている。手順やポリシーに重点を置きがちで効率などが後回しになっているのが、その理由だ。
AIで、高精度であるだけでなく、カスタマイズした宇宙天気予報も
従来の宇宙天気観測には、精度、解像度、更新頻度の点で大幅な改善余地がある。宇宙天気に関する情報が足りないにも関わらず、宇宙産業は拡大の一途をたどっている。これではリスクを大きく、また増加させているのと同じ。宇宙天気予測の技量と、宇宙産業が求める宇宙天気予報との間のギャップは大きくなる一方だ。 そのギャップを埋めようと、パーセプティブ・スペース社が登場した。同社では2022年の創設以来、衛星エッジプロセッサに搭載して利用するための軽量AIモデルを開発してきた。AIとセンサーフュージョンを使用。過去数十年分のNOAAやNASA、民間パートナーからの宇宙天気データと運用データを分析・活用している。 同社による宇宙天気予報は、情報がほぼリアルタイムで更新されるだけでなく、影響やリスクの分析も行われ、共に提供される。異常を察知したプラットフォームはサービス中断を事前に予測し、顧客に予防措置の実行を推奨する。小規模実験の結果ながら、精度、速度、信頼性において、従来のモデルを10倍以上上回る優秀さを記録した。 顧客に合わせて予測をカスタマイズすることも可能だ。例えば、高度200キロメートルで運用されている衛星と、400キロメートルの衛星では、地磁気嵐の影響が異なる。そこで、各々が必要とする情報を提供する。特定のミッションなどのために、ターゲットを絞って予測を行うこともできる。