「早くて未完成」と「遅くて完璧」 どちらが評価される仕事なのか?
「時間をかけないといいものはできない」「質の高いものにするには、なるべく多くの時間を使うことだ」これらは常識として、いろいろなところで聞く話です。しかし、少なくとも仕事に関して言えば、これらは噓であるということがわかります。一体それはどういうことでしょうか。優秀なコンサルタントたちへの取材からわかった、スピードと仕事を両立する仕事術とは? 日本の働き方は改善しているのか? 長時間労働の実態 ※本稿は『コンサル一年目が学ぶこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
Quick and Dirtyか、Slow and Beautyか?
「大石さん、くだらないところに時間を使わないで、本質的な作業をしてください」 これは、わたしが最初のプロジェクトで言われたことです。そのときわたしは何をやっていたかというと、パワーポイントの資料で、右上のところについているナビゲーションをていねいにつくっていたのです。ナビゲーションとは、「いま1章で、あなたはここを読んでいます」という表示のことで、ウェブサイトではお馴染みのものです。 しかし、資料で大事なのは中身です。本質的なところができていないのに、そんな体裁のところにばかり時間をかけてしまっていた。案の定、肝心の中身はぼろぼろでした。 「いいですか、大石さん、最終的に資料の体裁は大事です。ですが、あなたは新人、そんなつまらない体裁なんか真似ている暇がありますか? あなたは、1日かけてこの資料をつくりましたが、中身はまるでなく、右上のナビゲーションを綺麗にして本番の資料を真似ただけ。中身ができてないのに、体裁なんかではごまかせません」 それを聞いて、「これは、本当にヤバい」と思いました。このままでは、最低の評価を受けるかもしれない。体裁でごまかせるほど、この会社は甘くないのだと。マネジャーは続けてこう言いました。 「大石さん、Quick and Dirtyを心がけてください」 聞いたこともない言葉でした。 「"Quick and Dirty"ですか?」 「はい。反対語は、Slow and Beautyですよ」 Quick and Dirty とは、直訳すれば、「素早く、汚く」ということ。時間をかけて完璧なものを目指すよりも、多少汚くてもかまわないので、とにかく早くつくる。出来は悪くとも、早く仕上げたほうがよいということです。