<新紙幣、新時代。>栄一翁の想い継ぐ~(2) 渋沢雅英さん「国を思った栄一の精神を改めて考える」
日米関係が難しい時代にあっても、日本を理解したいと考える人たちがいました。資料を読み解くと、当時の国際関係の輪郭がくっきりしてきます。大河ドラマでも描かれ、この本を参考にしてくださったと聞きました。栄一の生涯の中では「小さな絵」ですが、人間としての幅の広さや魅力が感じられて、栄一への興味がより深まりました。 父の努力と成果を引き継ぎたいと伝記資料のほとんどをデジタル化し、渋沢栄一記念財団のウェブサイトで自由に閲覧可能です。伝記資料は、日本を研究したい人にとって大変面白い、良い資料です。栄一研究が海外でもますます広がることを期待しています。 新1万円札が今日発行されます。旧渋沢邸「中の家」を訪ねた際に、栄一のアンドロイドに会いました。身長も体格も私と同じくらい。顔もどこか似ている気がしました。その顔がたくさんの人のがま口に入っていると思うと、なおさら妙な感じがします。 知恵のある者だけが利益を上げたところで、国は豊かにはならない。私心を捨て、国のあり方を思った栄一の精神を、日本の歴史の中で考えていただきたいと改めて思います。
(2024年7月3日 埼玉新聞発行「新紙幣、新時代。~栄一翁の思い継ぐ~」より全文掲載) ■しぶさわ・まさひで 1925年2月27日、渋沢栄一の曾孫としてイギリス・ロンドンで誕生。父は日本銀行総裁や大蔵大臣を務めた渋沢敬三。母・登喜子は、元京都府知事木内重四郎の娘で、岩崎弥太郎の孫娘。50年、東京大学農学部卒業。64年、一般財団法人MRAハウス代表理事就任。97年~2020年、公益財団法人渋沢栄一記念財団理事長(現・相談役)。著書に「太平洋にかける橋 渋沢栄一の生涯」(読売新聞社)など多数。 第3回は7月5日(金)、埼玉県知事・大野元裕さんを配信予定です。 =埼玉新聞WEB版=