<新紙幣、新時代。>栄一翁の想い継ぐ~(2) 渋沢雅英さん「国を思った栄一の精神を改めて考える」
2024年7月3日、ついに発行となった新1万円札の肖像となる渋沢栄一翁は、我々の故郷・埼玉県深谷市の出身です。 新1万円札“号外”の拡大用画像 歴史的瞬間、サイズは実寸大 大勢がスマホ撮影、ステージへ一斉に
「道徳経済合一」や「論語と算盤」など栄一翁の精神は、変化に富む現代においても脈々と受け継がれ、多くの日本人がその魂に触れ、影響を受けています。 「新紙幣、新時代。~栄一翁の思い継ぐ~」では、地元深谷や栄一翁にゆかりのある皆さんに、栄一翁の残した「言葉」を選んでもらい、語っていただきました。 ■「一人だけ富んでそれで国は富まぬ」(「青淵百話」) 曾祖父が新1万円札の顔になる―。よく感想を問われますが、はばかりがあります、家族のことですから。「一人だけ富んでそれで国は富まぬ」。栄一は実業家として近代国家の基本を提唱しました。教育機関や社会公共事業の支援、民間外交にも尽力した守備範囲の広さ、人間的な大きさや魅力などが評価されたのだと思います。 栄一の記憶はほとんどありません。ただ、栄一の周りにはいつもたくさんの人がいて、家族といえども面会するのでさえ簡単ではなかったので、偉い人なんだろうと幼心に感心したことは覚えています。
大河ドラマ「青天を衝け」は全編観ました。その中に『徳川慶喜公伝』編さんの逸話が描かれています。栄一には、慶喜公の真意を後世に正しく伝えたいという強い意思があったのでしょう。序文は栄一によるもので、若き日の父・敬三(栄一の孫)はこれを読み、涙したといいます。「この子は世の中が分かる」。栄一は父を褒めたそうです。 民俗学者でもあった父は栄一の伝記資料を編さんしました。本編全58巻、別巻全10巻、4万数千頁にも及び、編さんが完了したのは父の死後でした。 『渋沢栄一伝記資料』には、手紙や講演記録、新聞や雑誌の記事などあらゆる資料が収められています。一人の実業家としては類を見ない数で、時代や社会背景までも映し出す貴重な研究資料といえます。 膨大な資料を無差別に、徹底してまとめ続けた父の意思の強さ、執念に感心します。後世に正しく伝える。父は栄一から受け継いだのだと思います。 自著『太平洋にかける橋 渋沢栄一の生涯』は、民間外交の面から、栄一の国際的な活躍と生涯を考察したもので、伝記資料に基づいています。