保育園「落選狙い」を決断した女性 「ひきょう」と批判の声も保護者側には切実な事情、専門家はルール自体の問題を指摘 #令和の親
育児休業給付(育休手当)の期間延長を狙って、人気の保育園に申し込んであえて落選する行為が問題となっている。「真面目に申請している落選者にとって迷惑」などと批判も上がる中、厚生労働省は来年4月から育休給付延長の審査を厳格化することを決めた。一方で、「落選狙い」をする保護者側にも切実な思いがあるのも事実で、「悪いことをしているように言われるのはつらい」とし、制度自体のあり方を問題視する声も上がる。専門家はルールの修正だけでなく、仕事と育児を両立するための仕組みの必要性を訴える。(デジタル編集部・町香菜美)
”落選狙い”を決意 「復職しても、給料は育休手当と変わらないかむしろ安くなる」
「復職しても、給料は育休手当と変わらないかむしろ安くなる。それなのに、我が子と過ごす時間が圧倒的に減ることは受け入れられない」。2022年秋に長男を出産した市川市の会社員女性(30)は「落選狙い」をした理由を明かす。 1年間の育休を取得し、育休手当も受け取ったが、息子が小さいうちに職場復帰するとなると時短勤務にならざるを得ない。そうすれば給与は出産前より減ってしまううえ、月数万円の保育料がかかる。一方、保育園に落選したなどの理由があれば、育休手当の期間を1歳までから最長2歳までに延長できる。「職場が人手不足傾向のため、仕事と家庭を両立できるのか不安だったということも一因でした」。 女性は落選するため、毎月出る保育園ごとの募集人数をチェックし、見学した保育園では最近の入園数の状況や見学者の人数を聞いて高倍率か探った。翌年、見当を付けた1園だけに申し込み、落選。育休延長となった。 八千代市内で1歳の長男を育てる30代の会社員女性は、育休期限となる長男の1歳の誕生月の2月に、人気の2園のみを申し込んだ。年度内は育休を延長し、4月からの復職を希望していたからだ。「子どもと一日中過ごせるのは出産後の1~2年だけ。仕事が始まれば朝起きて1時間、保育園から帰って寝るまでの2時間程度しか子どもと過ごせず、家事に追われきちんとしたコミュニケーションの時間が取れない。遠方の両親に子どもを会わせる機会も少なくなる」と切実な思いを吐露する。