福島県勢初の高校サッカー決勝進出を狙う尚志は、なぜ旋風を巻き起こしているのか?
大会直前の昨年末に続いて5日の準々決勝から準決勝までの中断期間にも、福島県のJヴィレッジで短期合宿を行った。東日本大震災および福島第一原子力発電所事故の発生に伴い、直後から閉鎖されて原発事故への対応拠点となっていたJヴィレッジは、昨年7月下旬から活動を再開していた。 前回のベスト4進出は、くしくも東日本大震災発生後で初めて迎えた全国選手権で果たしたものだった。福島復興のシンボルに変わったJヴィレッジで汗を流した尚志が破竹の快進撃を演じ、今大会を勝ち上がってきたことの価値を仲村監督はこう語る。 「福島県もすごく喜んでくれるはずだし、県民の方々にも明るい話題を届けられるんじゃないかと思っています。合宿をやらせてもらったことで、部員たちも『福島県は本当に大変だったんだ』とあらためて理解して、みんなで頑張ろうと話していました。7年前は選手層も薄くて、ちょっと厳しかったんですけど、今回は戦力も整っているし、いろいろなことができると考えています」 一人あたり年間2冊は綴るサッカーノート。無我夢中で歩んできたサッカー人生で培われた仲村監督の多彩な人脈。そして、いまだ復興半ばにある福島県を勇気づけたいという願い。まさに「三種の神器」に支えられてきた尚志は一戦ごとに成長し、指揮官も「選手たちの顔つきが変わってきた」と目を細める。 「青森山田の黒田剛監督は憧れの存在ですし、2年前には監督とコーチとして、高校選抜を一緒に指導させていただいた。ぜひ戦いたいと思っていましたし、相手がいることなのでわかりませんけど、その先には恩師が待っていると思うので」 本田監督に率いられる流通経済大柏と全国選手権で初めて、しかも福島県勢として初めて進出する決勝で対峙する夢を成就させるために。天然芝のグラウンドを含めた最高の施設環境で、激戦の連続で蓄積された疲労を取り除きながら練習を重ねた尚志は10日にJヴィレッジ合宿を打ち上げ、2年ぶり2度目の頂点を目指す最強軍団、青森山田を乗り越えるための心技体を整えた。 (文責・藤江直人/スポーツライター)