平成・令和の刑事ドラマは「『踊る大捜査線』の影響を受けすぎ」? 「踊る」の新作公開&過去作一挙放送が指し示す、刑事ドラマの悲喜こもごも
令和の今ならXのトレンド入りしそうな遊び心のある仕掛けや芸人の積極起用を幅広く行っていたことも、「時代を先取りしていた」と言っていいかもしれません。 その他でも「踊る」シリーズは、「洋画が優勢だった映画業界の流れを変えた」「テレビドラマの映画化を定着させた」「それによってテレビ局に莫大な収入と影響力をもたらし、低迷のイメージを軽減させた」などと称える声もありました。 ■再放送と新作公開が「青島待望論」に
12年ぶりの新作公開が報じられたとき、歓喜の声ばかりではなく、「何で今さら」「過去の遺産にばかり頼る」などの否定的なコメントもありましたが、裏を返せば「それだけ特別な作品」ということ。 日本における刑事ドラマ、実写映画の歴史でトップクラスの実績と評判を得た作品なのですから、スタッフとキャストが健在で制作できる限り、続けない手はないのです。 同じく1990年代にスタートした刑事ドラマでファンの多い「古畑任三郎」(フジテレビ系)は、脚本の三谷幸喜さんこそ健在ですが、主演の田村正和さんが亡くなったことで続編の制作が難しくなりました。
一方、「踊る」シリーズは前述した3人のメインスタッフも、織田さんや柳葉さんも健在。「今秋の柳葉さんが主演を務める『室井慎次』が成功すれば、織田さんの『青島俊作』が実現するかもしれない」という夢につながっていきます。 だからこそファンは今秋の新シリーズを歓迎していますし、「再放送を視聴し、劇場に足を運ぶことがスタッフや織田さんへの“青島待望論”につながる」と思っているのではないでしょうか。 国民的なドラマだからこそ、若い世代を中心に「『踊る』は知ってはいるけど見たことがない」という人がターゲットに入りやすいこと。現在放送されている刑事ドラマに刺激を与えることなども含めて、過去作の再放送や新シリーズの公開はさまざまな意義を感じさせられます。
木村 隆志 :コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者