１９６９年の１巡目長崎国体で女子選手として国体史上初めて選手宣誓をした塚原（旧姓小田）千恵子さん＝諫早市、県立総合運動公園陸上競技場

　「体操の女王」と呼ばれた塚原千恵子さんの死去が明らかになった２１日、出身地の長崎県内でも惜しむ声が相次いだ。 　１９６８年メキシコ五輪に出場。翌６９年の１巡目長崎国体で、女子選手として国体史上初めて選手宣誓を任された。母校の県立長崎西高には、今も総合開会式の写真が展示されている。 　２００１年４月から３年間、同校に教諭として勤務し、現在は県体操協会理事長の鹿摩幸政さん（６７）は「写真を生徒に見せながら、おまえたちの先輩だぞと言って誇りを持たせていた」と振り返る。「長崎の体操界を常に気掛けてくださったと聞く。どうか、ごゆっくりお休みください」と追悼した。 　同じ長崎県出身の五輪王者、内村航平さんを国内トップレベルに育てた経歴もある。中学卒業後に上京した内村さんを自身が指導する「朝日生命体操クラブ」で受け入れ、高校３年間で才能を開花させた。航平さんの母、周子さんは「この人がいなかったら、今の航平はない」と感謝する。 　指導は厳しく、的確で、多くの五輪選手を育てた。周子さんは「厳しさの中に温かみがある。この人の上には誰も立てないという存在だった。だから幸せと、人一倍の苦しみもあったのではないか。人生を全うされた」としのんだ。 　塚原さんは０７年９月、日本女子代表の監督として世界選手権（ドイツ）に臨み、翌０８年北京五輪の団体代表権を獲得した。当時、代表チームの主将を務めていた聖和女学院中講師の守谷（旧姓椋本）啓子さん（３８）は「厳しくて怖かったけれど、絶対的な信頼があった。９年ほど前、娘を一度抱っこしてもらってから会えていなかったので、とても申し訳ない。とにかく今はびっくりしている」と肩を落としていた。