インパクトありすぎ…『相棒』シリーズ初期で印象的だった名作エピソード
■少女の境遇がつらすぎる…Season2の15話「雪原の殺意」~16話「白い罠」
初代・五代目相棒である亀山薫と不良少女の交流を描いたSeason2の15話「雪原の殺意」と16話「白い罠」は、社会のあり方を考えさせられるエピソードだ。ストーリーの始まりは、薫がある少女を拘束する所から始まる。 少女は沙雪という名で、売春で逮捕されて公判前に逃亡していた。薫は右京の許可をもらい、札幌地検へと彼女を送り届けるために札幌へと向かう。しかし、そこで彼女の生い立ちを聞き、薫はどうにか彼女の人生を好転させたいと考え始める。 北海道の雪景色の美しさも印象的なこのエピソードは、『相棒』屈指の重い物語だ。沙雪はかつて父親が死刑囚になったせいで、売春に手を染めざるを得なくなった。さらに、愛した男は彼女を利用し裏切る。おまけに終盤では、いつもそばにいてくれた同級生が父親に殺された被害者の遺族・津村真二だと判明し、彼から命を狙われてしまうのだ。 沙雪には不幸が次々と訪れ、最後には死を受け入れようとさえするのだった。そんな彼女を殺そうとした津村の「僕が殺したかったのはこんな奴じゃない!これじゃまるで僕と一緒じゃないか!」というセリフは、加害者家族と被害者遺族の苦しみを反映した悲しき慟哭となっている。
■司法制度の問題点を浮彫にしたSeason3の10話「ありふれた殺人」
時効という制度を扱っているのが、Season3の10話「ありふれた殺人」だ。物語は、ある男が自首してくるところから始まる。 とある女子高生が殺される事件が起き、犯人が捕まらないまま20年経ったある日、小宮山という男が自分が犯人だといって出頭してくる。しかし、すでに時効が成立しており、逮捕はもちろん、氏名の公表すらできない。すると、被害者の両親である老年の夫婦が、「犯人の名前を教えてほしい」とやってくるようになるのだ。 やがて小宮山が殺されてしまうと、その疑いが彼らに向いていく……。 時効成立後の犯人の情報を秘匿するという警察官としての責務と、被害者遺族の思いに応えたいという人としての感情の間で揺れ動く薫の姿には、やりきれない思いを感じてしまう。劇中に幾度も登場する「犯人を教えてください」という坪井夫婦のセリフが、見ているこちらの心にも重くのしかかってくるようだった。 いまでは殺人事件の時効が撤廃されたこともあり、時効をめぐるエピソード自体少なくなっている。そういう意味でも貴重な回である。