ヘルパー国賠訴訟の控訴審判決、原告側主張を一部認めるも国の責任認めず
厚生労働大臣の諮問機関、社会保障審議会の介護給付費分科会が1月22日、国の介護事業経営実態調査(以下、経営実態調査)に基づく訪問介護の基本報酬引き下げ方針を発表。これを受け、関係する市民団体や一般社団法人などが抗議声明を出したり抗議文を厚労大臣に提出するなど、在宅介護をめぐる動きが慌ただしくなっている。 そうした中で2月2日、登録型の訪問介護員(ホームヘルパー)ら3人が、介護の現場における労働基準法違反の環境に厚労省が規制権限を行使しないのは違法だとして国に損害賠償を求めた裁判(本誌昨年11月17日号などで既報)の控訴審判決が東京高裁であった。谷口園恵裁判長は冒頭、硬い表情で「原告らの請求を棄却する」と告げたが、その後約15分にわたり判決要旨を読み上げた。 「訪問介護の現場一般において、賃金支払に関する労働基準関係法令の遵守や、賃金水準の改善と人材の確保が、長年にわたり政策課題とされながら課題の解消に至っていない事実は認められる」(判決より)など原告側の主張の一部は認められた。だが、結論としてはその実態が「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くとは認められない」として棄却する内容だった。 当日は定員約40人の一般傍聴席 を求め、原告側支援者など74人が列をなした。他方、国側が座る被告席は今回も空席のままだった。 その後の報告集会で原告側主任代理人の山本志都弁護士は、まさに現在問題となっている訪問介護基本報酬引き下げ方針の根拠に挙げられている経営実態調査のおかしさを「この裁判ではずっと主張してきた」と、意義を強調。請求が棄却されたとはいえ、原告側が立証すべく独自に実施したアンケート調査結果などに基づく主張を裁判所も一部取り入れていたことについて「一定の効果を得ることができたと思う」と話した。同じく代理人の大棒洋佑弁護士も、国賠訴訟のハードルの高さを感じつつ、一審判決より踏み込んだ判決内容には一定の評価をしていた。