ヘルパー国賠訴訟の控訴審判決、原告側主張を一部認めるも国の責任認めず
判決から見えた一筋の光
原告3人も同様の評価だった。「この裁判を通じケアを『社会の柱』にしたいと思うようになった。ケアは『暮らしの継続』にとっても切り離せない存在です。保育や教育、医療などとともに社会の中心に据えることで、暮らしや人間の心がもっと豊かになっていく」(藤原路加さん) 「ケアする人・される人ではなく、みんなが『ケアする人』になりましょう。国が変わることなど待っていられない状況。自分の暮らす町で、隣り近所で助け合う仕組みを作りながら国に文句を言っていけばいい」(伊藤みどりさん) 「国は事業所の大規模化を言い続けているが、訪問介護の基本報酬の引き下げで、公権力を利用して在宅介護を危機に追いやろうとしている。私たちはそれに立ち向かわなくてはいけない。もっと多くの人たちと繋がっていきたい」(佐藤昌子さん) 3人とも一見敗訴とは思えない穏やかな、自分たちでも「棄却されたのに勝ったかのよう」(伊藤さん)というような表情で、判決の先にあるものを見据えていた。 深刻なヘルパーの人手不足は国も認めているところだ。国の調査によればヘルパーの有効求人倍率は15・53倍(最新の2022年度データ)。人手不足を感じている事業所の比率も約8割にのぼる。23年の訪問介護事業所の倒産は、60件と過去最多だ。冒頭に挙げた介護給付費分科会による意見聴取でもほとんどの団体が訪問介護の基本報酬の引き上げを求めていた。原告らは、それぞれの目標を胸に、上告を検討中だ。
西村仁美・ルポライター