ECB利下げ、インフレ鎮静化と景気回復で可能に-経済には問題山積
このような見方を支えているのは、欧州連合(EU)が新型コロナウイルス禍からの復興プログラム、「ネクストジェネレーションEU(NGEU)」の下での債券発行を可能にしたことや、ECBが景気刺激策を実施し債券市場を抑制するための新たな危機対応手段を発表したことなど、地域レベルでより結束力のある政策だ。
昨年、投資家のパニックが米国とスイスの銀行を破綻させたとき、このユーロ圏の回復力が証明された。ユーロ圏ではそのような犠牲はなく、単一監督メカニズムは今年、発足10年を迎える。
しかし、地域の長期的課題は、かつてないほど危険なものに見える。
国際通貨基金(IMF)のアルフレッド・カマー欧州局長は5月、「欧州は現在好調だが、高齢化、気候変動、世界の分断化など、深い構造的課題が待ち受けている」と警告した。
生産性の低さ、そしてそれに伴う潜在成長率の低さは、欧州の問題の一つだ。今世紀が始まって以来、EU全体の生産性は一貫して米国より低い。欧州国際政治経済研究所(ECIPE)は5月の論文で、こうした点が生活水準向上の遅れとグローバルな経済力の低下につながると指摘した。
もう一つの大きな問題は人口の高齢化で、潜在成長率の低下と債務の持続可能性への懸念に拍車をかけている。
最も切迫しているのは、すでに財政規律の回復に苦戦している国々の財政悪化だ。スコープ・レーティングスによれば、イタリアは3年内に、欧州最大の借金の山を抱えることになる。
IMFの予測では、国内総生産に占める債務の割合がイタリアやフランス、ベルギーで上昇し、財政赤字はEUが定めようとしようとしている3%という上限をはるかに超える見込みだ。
債券投資家は平静であるかのように見えるが、過去の欧州ソブリン債危機は、センチメントがいかに簡単に変化するかという教訓を与えている。
バーデン・ビュルテンブルク州立銀行(LBBW)のチーフエコノミストで、S&Pグローバル・レーティングの元シニア格付けアナリストのモリッツ・クレーマー氏は、「リスクは高まっている。市場はもっと不安を抱くべきだと思う」と述べた。